米津玄師「Lemon」、フジファブリック「若者のすべて」なぜ高校教科書に採用? 版元編集者に聞くポップスの選定基準

「Lemon」「若者のすべて」なぜ教科書に採用?

企画や特集における工夫

 また単にポップスを歌唱教材として掲載するだけではなく、企画の立て方や特集の組み方も工夫していると今井氏は語る。

「現行の『高校生の音楽1』では「初音ミク」を取り上げましたが、“ポピュラー音楽の変遷”を企画するなかで、各時代ごとの特徴を紹介するなかでボーカロイドの登場を取り上げたものです。曲そのものというよりもむしろ音楽史の中でエポックメイキングな出来事として、初音ミクを取り上げたのです。今回『若者のすべて』と『Lemon』を取り上げたのもこれと通じるところがあり、『MOUSA1』で日本のポピュラーミュージックを年代で区切って特集する企画と関連付けて掲載しました。例えば1940年代『東京ブギウギ』、1960年代『見上げてごらん夜の星を』、1970年代『翼をください』、そして2000年代で『若者のすべて』、2010年代で『Lemon』というように、その時代を代表するような楽曲を選定したのです。先ほども申し上げましたが、曲としての力、教材性があるかどうかが重要なポイントで、高校生が聴いていそうな音楽を取り上げることで興味を持ってもらいたいというよりは、音楽の変遷を理解できるような工夫をしています」

教科書制作における課題や難しさ

 今井氏いわく、かつては音楽の授業で学ぶことが、生徒たちの身の回りにある音楽と乖離しているという意見が一部あったというが、そのような状況は徐々に解消され始めているのかもしれない。では現在、教科書制作における課題や難しさはあるのだろうか。

「これまで多くのJ-POPを掲載してきましたが、近年難しくなってきたのは今後掲載する楽曲が、10年、20年と残っていくような本当にいい楽曲なのか見極めることです。昔に比べるとメガヒットが生まれづらい状況で、一般の方が知っているような知名度の高い楽曲や、またその楽曲が何年もブームになるといったトレンドが過去に比べると少ない。さらに付け加えると音楽のジャンル自体が多様化し、常に更新されています。そうするとシーンを捉えて紹介すること自体が難しくなるので、その楽曲が誕生した背景よりも、楽曲そのものの魅力、パワーがやはりポイントになってきていますね」

授業が多様な音楽に触れるきっかけになれば

 最後に教科書制作の現場からみた音楽の授業の意義、また高校生の音楽の向き合い方についてメッセージをもらった。

「世の中にはいろいろな音楽が溢れていますが、授業でないと演奏できない、聴けない音楽がたくさんあると思います。例えばジャズに影響された音楽はたくさんありますが、いわゆるモダンジャズと呼ばれるものに今の子供たちが触れる機会がない。そういったものに授業で触れていくこと、『普段聴いているあの音楽はこれがルーツなんだ』と感じ取ること、そういった意義も音楽の授業にはあると思います。ネットが発達した今の社会では『好きなものしか聴かない』という状況に陥りがちです。しかし世の中にはいろいろな音楽があって、それらの価値に触れることも大切だと思います。例えばYouTubeなどで検索してみて聴いてみることを通して多様な音楽に触れていただきたい。そのきっかけ、窓口に音楽の授業がなってくれればいいなと思いますね」



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