『めだか達への伝言』インタビュー
medakaya.com 青木崇浩はなぜCDデビューした? “めだかの第一人者”が福祉事業を展開、目指すは新しいエンタメの形
褒められることをしているつもりはない
ーー出で立ちは、あの国民的少年漫画の悪役ですが、なぜこのビジュアルを選んだのですか?
青木:僕がこの漫画の世代ということもあるんですけど、このキャラは本当に悪い奴なんですよ。すごく欲深い上に卑怯で、最初から最後まで徹底して悪いけど、そこが人間臭くて好きなんです。福祉事業をしていると褒めていただくことも多いのですが、僕は決して偉くもないし、褒められることをしているつもりもなく、逆に欲深いくらいで。そもそも人間の本質はみんな欲深くて、自分勝手なものだと思うんです。じゃあ僕にとっての福祉ってなんだとうと言われると、嘘でも、偽善でもいいから一つ良いことをしてみようという気持ちで始めたもので。みんながそういう気持ちを持っていれば、世の中の福祉事業も良い方向に進むと思っているんです。
ちなみに柔道着なのは、僕が単純に柔道が好きだからです。海外で講演会をするときは、柔道着姿で講義をすることもあります。台湾の環境省でビジネスマッチング的なイベントに参加したときも、この格好でラップを披露したらすごくウケたんです。で、各社いろんなプレゼンをするわけですが、結果的に僕の前にだけ行列ができていた。それは別にラップが良かったのではなくて、単純に面白がってくれて、僕と仕事を一緒にしたいと思うきっかけにはなったんだと思います。
ーー環境省でラップを披露するのはすごいですね(笑)。ちなみに、HIPHOPやラップはもともと馴染みのある音楽ですか?
青木:もともとHIPHOPは好きで、趣味でラップみたいなこともやっていたので、ビートに合わせて歌うことに馴染みがあるんです。会社のリモート会議でも社員に自作のラップを聴いてもらったりしてますね(笑)。それに僕は本も書いてはいるので、語彙の引き出しは持っているから、作詞には自信があって。とはいえプロではないですし、全部独学で身につけたものではありますが(笑)。
ーー歌詞には青木さんの人生観や若者に対するメッセージが込められていると感じました。
青木:僕の会社には鬱や統合失調症の方などが就労準備として来てもらっているんですけど、僕自身、大きな病気をした時は絶望的な状況の中で鬱状態になってしまい、半年くらい心療内科に通う経験をしたんです。そんな状態から自分がどうやってリカバリーしたのか、実体験をもとに歌詞は考えていきました。歌詞の流れとしても、精神的に病んでいる状況から、徐々に立ち上がっていき、最終的には成功を掴みとるような物語が描かれています。
ーー〈文句なんか言ってんな ごちゃごちゃ言わずに力をつけろ〉〈もっともっと想像し考えろ そして 今 動き出せ〉といった言葉は、絶望的な状況から再起した青木さんの哲学なのかなと。
青木:自分の若い頃にも言えるんですけど、今の子供達に何が必要かというと、想像したり思考することだと思っていて。福祉事業も仕事をする場所を作業場と言っていたり、考えるよりも手を動かすことがメインな印象があるですけど、僕は福祉を作業から思考へとずっと訴えているんです。単純作業というのは、テクノロジーが発達すれば自然と機械がこなすようになっていくわけで。だからとにかく考え抜くこと、考えることこそが仕事なんだと言いたい。もちろん、行動も大事だとは思います。でも、行動に移す前に人の何倍も考えて、それからアクションする先に成功が待っているというメッセージを伝えたかったんです。
ーーフィーチャリングゲストとしてkolmeのMIMORIさんも参加しています。完成した音源を聴いた印象はどうでしたか?
青木:MIMORIさんに入っていただいたおかげで締まりましたね。素直に、良い曲ができたなと。例えば僕の本がなぜ売れたのかというと、全部実体験から書かれたものだからだと思うんですね。ラップもリアルな言葉を音に乗せて表現する音楽だと思うんですけど、これほどリアルな歌はないと思っていて。少し抽象的ではありますが、この歌で書かれていることは、全部僕が実践してきたことですし、とことん自分らしさを出せて良かったなと。
めだかのことを「嫌い」という人はいない
ーーまた、エイベックスと「めだかやドットコム」の共同プロジェクトとして、進化系アクアリウムブランド「NIWA」や「ANDON」も発表されています。青木さんが開発した水質を浄化させるバクテリアによって、「臭いなし・水替えなし・エアレーションなし」という夢のような「生物濾過水槽システム」が生み出されました。
青木:めだかを飼育する上で、設備を揃えるのはもちろん、臭いであったり、日々の水槽のメンテナンスがネックになると思うんです。でも、このバクテリアによって、それらの問題が全部解消されるわけです。もちろん、すべて科学的に研究して特許も取っています。でも、自然浄化水槽の認知ってまだ全然普及してはいないんです。たとえ優れた発明であっても、人の手に渡らなければ価値がないのと一緒で。エイベックスさんと一緒に広めていけたらと思って、今いろんな取り組みをさせてもらっています。
僕がエイベックスさんに何を求めるかというと、やっぱりエンターテインメントなんですね。好きなアーティストのライブを観に行くために仕事を頑張ろうとか、必ずその人の人生の活力としてエンタメがあると思うんです。そんな人を魅了するエンターテインメント性があれば、きっと日本中の人たちが注目してくれて、触れてくれて、買ってくれると。「NIWA」自体はまだ一般販売はしていないのですが、エイベックスさんが持つ光や音のノウハウと組み合わせて、今後も面白い商品が作れると思っています。
ーーここ数年で空前のめだかブームが起こり、コロナ禍でよりペットの需要も高まっています。実際にこの手間いらずな水槽が一般化されたら、みんな欲しがると思います。
青木:単純に、めだかは可愛いし、癒される生き物だと思うんです。めだかのことを好きか嫌いか質問されて「嫌い」と答える人はいないというか。僕も病気をして外出ができなかった頃に、“Quality of Life”=生活の質の向上を意識するようになって。家にいる時間をいかに充実させていくか考える中で、めだかに救われた部分は大きかったんです。それに、子どもにとっても、めだかには科学や自然の学習要素もありますし、家にいながら命の誕生と最期を観測することで、無意識に学びへと繋がります。それに部屋に水槽を置くと湿度が高くなるので、乾燥対策やインフルエンザなどのウイルス対策としても効果があったりもして……そういうところも含めて、今後も需要は高まっていくと考えています。
ーー今後、エイベックスさんとの取り組みにおける展望は?
青木:コロナ禍ということもあって、なかなか明確には決まってはいないのですが、大きな目標としては、めだかのアートアクアリウムを日本やヨーロッパで開催したいですね。めだかは英語で「rice fish」と言うのですが、昔は田んぼにめだかを放流して害虫を食べてもらって、そこから美味しいお米が生まれていたんです。そういう文化的な背景や、色も侘び寂びがあって非常に日本的なんですね。鯉と比べると派手さはないかもしれないですが、あの優雅さの中には日本の文化が詰まっている。そういうものをエンターテインメントと共に世界に発信していきたいと思っています。
■リリース情報
『めだか達への伝言』
10月1日(金)リリース
¥1,320(税込)
配信はこちらから
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