矢野顕子、芳醇なアンサンブルで響かせた“音楽を鳴らす喜び” 新曲尽くしとなった一夜限りのBlue Note TOKYO公演

矢野顕子、新曲尽くしのBlue Note TOKYO公演

 古き良きアメリカのフォークソングを想起させる「Nothing In Tow」(作詞・作曲:矢野顕子)に続くのは、アルバムの表題曲「音楽はおくりもの」(作詞・作曲:矢野顕子)。去年の春、ロックダウン中にニューヨークのハドソン川の側をジョギングしているときに着想を得たというこの曲には、「素晴らしい音楽を聴きたい」「音楽に励まされたい」という気持ちが素直に表現されている。祈りにも似た、美しく、憂いを帯びたメロディ、そして矢野の歌声に寄り添い、心地よい高揚感を生み出す演奏。この素晴らしい音楽家たちが奏でる音とともに、〈きょうは みんなの大好きな歌を歌おう〉というフレーズが伝わる瞬間は、まさに至福だった。

 本編ラストは「ごはんができたよ」(作詞・作曲:矢野顕子)。名盤『ごはんができたよ』(1980年)に収められたこの曲は、ファンの間で根強い支持を得ている楽曲のひとつで、〈つらいことばかりあるなら/帰って帰っておいで〉という歌詞は、「魚肉ソーセージと人」のテーマともつながる。約40年の時を経て、2つの名曲の結びつきを感じられたのも、この日のライブの大きな収穫だったと思う。

 アンコールで矢野は「なかなか前のようにはいかないかもしれませんが、私たちは音楽を作ることはやめません。皆さんもどうぞ、機会があったら、また聴きにきてください」と観客に語りかけ、以前からこのメンバーで演奏されている「津軽海峡・冬景色」(作詞:阿久悠 作曲:三木たかし)を披露。刺激的で豊かなインタープレイが響き渡るなか、ライブはエンディングを迎えた。アルバム『音楽はおくりもの』を通し、ポップミュージックの奥深さをたっぷり堪能できる素晴らしいコンサートだった。

 12月には神奈川、静岡、群馬、大阪、愛知、東京で『矢野顕子 さとがえるコンサート2021 〜音楽はおくりもの〜』を開催。新たな名盤『音楽はおくりもの』の豊かさ、矢野・小原・佐橋・林による演奏をぜひ体感してほしいと心から願う。

■セットリスト
『矢野顕子 featuring 小原礼・佐橋佳幸・林立夫『音楽はおくりもの』リリース記念ライブ』
2021年8月31日(火)Blue Note TOKYO
1  遠い星、光の旅。
2  わたしのバス(Version 2)
3  わたしがうまれる
4  なにそれ(NANISORE?)
5  魚肉ソーセージと人
7  音楽はおくりもの
8  ごはんができたよ
9(Encore)津軽海峡・冬景色

■その他公演情報
『AKIKO YANO "Solo Live"』
2021年9月26日(日)19時30分スタート
出演:矢野顕子(Vo/Pf)
・アーカイブ配信視聴期間:9月29日(水)23:59まで
・9月4日公演(2nd Show)の収録配信
・出演:矢野顕子(ピアノ、ヴォーカル)

<チケット>
一般:¥3,300(税込)
Jam Session会員:¥2,200(税込)
PIA LIVE STREAM:https://t.pia.jp/pia/events/pialivestream
イープラス Streaming+:https://eplus.jp/sf/guide/streamingplus-userguide
ZAIKO:https://zaiko.io/support

矢野顕子 オフィシャルサイト

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