Official髭男dism、『Editorial』リリース記念オンラインフリーライブ 荘厳な雰囲気の中で響かせた静かな自信と覚悟
Official髭男dismが8月28日にニューアルバム『Editorial』リリース記念のオンラインフリーライブをYouTubeで配信した。同時視聴者数は約19万人、累計視聴回数は約104万回を記録した今回の配信。17時半から2019年の初の日本武道館ライブからの抜粋やメジャーデビュー後のMVを届け、「#ヒゲダン祭り」のハッシュタグが日本でのトレンド入りを果たすなど、Twitterも盛り上がり続けた。
過去を振り返りながら3時間、都度のライブの完成度の高さと根本的な曲の強度を改めて実感したが、初見のオンラインフリーライブはマインドががらっと変わるのが自分でもわかった。特に「アポトーシス」。アレンジの深度に思わず肩に力が入るほど、これまでの楽曲ともライブアレンジの練り方が段違いだったのだ。
時計を巻き戻そう。セピアトーンな画面に藤原聡(Vo/Key)や小笹大輔(Gt)の足元が映った段階ではスタジオライブなのか?と思わせる画角だったのが、一気に引きの画でクラシックホールのような大会場、東京オペラシティであることが判明したとき、度肝を抜かれた。1曲目は『Editorial』のモードの口火を切った「I LOVE...」。ホールの残響が深い。サポートメンバーは6月の横浜ぴあアリーナMM公演と同様の布陣。これまでの無観客ライブの観客がいる想定の演出や演奏のベクトルとは違い、あくまでも曲をじっくり聴かせる趣向なのではないかと直感した。
それは続く「Universe」のフラットな照明で明かされた印象。壁面には楽曲にちなんだプロジェクションマッピングが投影されているものの、メンバーの表情や演奏はクリアに見える。この曲の演奏で強く印象に残ったのは、楢﨑誠(Ba/Sax)のおなじみ、ジョー・ダートばりのグルーヴの要たるプレイが完全に仕上がっていること。ホーン隊との絡みも熟成された印象で、早くも6月のライブとは違う「Universe」になっていた。
短時間に初見の視聴者にもいまのヒゲダンを伝えることが目的なら、外せないレパートリーは「Cry Baby」だろう。暗転の後、深いブルーのライトに照らされたステージはシングルバージョンの短いSEから演奏に切り込み。この意識のスイッチたるや。そしてプロジェクションマッピングが最大限、効果を発揮したのもこの曲。摩天楼なのか東京なのか、ビル群が映し出され、一気にメンタルも別次元へ強制移動させられた。藤原は派手なアクションもなく直立して歌うが、エンディングの〈リベンジ〉を伸ばして切る際の歌唱はまるで実際に繋がれた鎖を引きちぎるような、喉の限界を超えていくシャウトで締めた。短時間のライブゆえの試行なのか、その日のテンションだったのかは不明だが、ただでさえすさまじい展開と休む間もないこの曲の歌唱はまだまだ伸び代があったのだ。