Official髭男dism、『Editorial』リリース記念オンラインフリーライブ 荘厳な雰囲気の中で響かせた静かな自信と覚悟
そして冒頭にも書いた「アポトーシス」のライブ表現の深度は今までヒゲダンのライブで感じたことのない、えぐられるような感触を残したのだ。祈るようにマイクを両手で包むように歌う藤原、生ベースとシンセベースを効果的にスイッチする楢﨑。音源で聴く1Aのエレクトロニックな音像とも違って、2Aと完全に空気感を変えるのは若干難しそうだ。だが、そんなことより、サビのまるでDNAが螺旋を描くような画が想起される感覚が、大きな空間を作ったり、うねったりと変幻自在の楢﨑のシンセベースと松浦匡希(Dr)の自由に枝葉を伸ばしていくようなエモーショナルなドラミングそのものが藤原のメッセージをともに歌っている、そのビジョンの共有に度肝を抜かれた。さらに言えば小笹のタッピングと控えめなトランペットの微細な音の動きも、定石にとらわれることのない命の萌芽と静かな終わりを表現しているようだった。
「またこのバンドの音楽を聴いてやってください」(藤原)。待ちかねたツアーに浮足立つことはなく、常に更新されている自分たちの音楽を世に放つ、静かな自信と覚悟を窺わせた30分だった。そして、それは『Editorial』というアルバムの性格を物語るものでもあったのだ。