どんぐりず、飄々としながらもドープなスタンス 海外でも中毒者続出の“多面的な面白さ”
3曲目「6 ice」は1分15秒と短いランタイムではあるが、特筆すべきはチョモによるメロディセンスと言語感覚。ボイスサンプル的に挿入される森の声もよいスパイスとなっている。また、これは余談であるが、現代ヒップホップの語法でいうところの“ice”は、ケミカルドラッグの服用で生まれるアイシー=感覚的“冷たさ”の隠語であるが、本曲はそういった違法性のあるトピックではもちろんなくて、感情の冷ややかさや冷静さのようなものを感じさせるテーマとなっている。
本作の先行シングルとして配信リリースされた「ベイベ」も、やはりクールテンションなダンスチューン。享楽的なリリックに呼応するような各人のフロウもこのビートへのアプローチとして最適解を出しており、こういった言葉のハメ方の一つひとつが、彼らが持つ中毒性の一端を担っているように感じる。また、森が描き下ろし、シングルのジャケットにも使われた、フラットトップにサングラスのキャラクターが回転し続けるリリックビデオも味わい深い。
EPのラストを飾る「Woo」はヘヴィなドラムとダビーなベースが絡む、Beckらアーリー90'sのオルタナティブロック的な空気もまとったブレイクビーツ。こういった楽曲の引き出しがあるあたりに、ノリだけではない、彼らの音楽的IQの高さが窺える。また、筆者が以前『Red Bull RASEN』にて森へインタビューした際、これまでの自身のベストヴァースに前作収録の「NO WAY」と並んで、この曲でのヴァースを挙げていた。〈冗談じゃないね遊んでるだけムリムリ野暮用〉というリリックは、彼らのスタンスを端的に表したものに感じられる。そして彼らがポップフィールドに軸足を置きながらも、もう一方の足ではしっかりとヒップホップ的なメンタリティを踏み抜いてるさまもやはり痛快である。
このように『4EP2』を聴いての筆者の所感を書いたものの、どこかで自分が感じ取っているものが表面的な印象にすぎず、この裏に得体の知れない意図がまだまだあるようにも思ってしまう。もしかしたらないのかもしれない。核心に向かっても、飄々とすり抜けてしまう、そんな印象がどんぐりずにはある。ポップでありながらドープ、単純に見えて複雑、本作はそういった多面性が各所に散りばめられたEPなのだ。ただ、愕然とするのは、まだこれは4部作中の2作目であるということ。まだまだ彼らには引き出しがあるのだ。なんたるアンファンテリブル……いったいどうなってるんだ、どんぐりず!
※1:https://spotifycharts.com/viral/cl/weekly/2021-08-19--2021-08-19
※2:https://spotifycharts.com/viral/mx/daily/2021-08-16
※3:https://spotifycharts.com/viral/ar/weekly/2021-08-19--2021-08-19
■リリース情報
どんぐりず『4EP2』
2021年8月18日(水)配信リリース
配信リンクはこちら
<収録曲>
01. Just do like that
02. 8 hole
03. 6 ice
04. ベイベ
05. Woo
■ライブ情報
『WONK×どんぐりず(東京)』
日程:2021年8月23日(月)
会場:東京 TSUTAYA O-EAST
『ONE MUSIC CAMP 2021』
日程:2021年8月28日(土)
会場:兵庫 三田アスレチック 野外ステージ
『GIGANTIC TOWN MEETING 2021』
日程:2021年9月5日(日)
会場:大阪 大阪城音楽堂
『ODD BRICK FESTIVAL 2021』
日程:2021年9月26日(日)
会場:神奈川 横浜赤レンガ倉庫特設会場
『FFKT』
日程:2021年10月2日(土)~3日(日)
会場:長野 信州やぶはら高原 こだまの森
『FM802 MINAMI WHEEL 2021』
日程:2021年10月8日(金)~10日(日)
■レギュラー番組情報
『どんぐりbomb』
FM桐生(77.7MHz)もしくは専用アプリより試聴可能
2・4水曜20:00~20:59(再放送は土曜11:00~)
番組HP:https://dongurizu.com/feature/donguribomb