V系アーティストは2次元作品でどう描かれてきた? 『ヴィジュアルプリズン』スタートを前に考察
“もしこの世に存在するヴィジュアル系アーティストが、全員ヴァンパイアだったら……“。原作・プロデュースをつとめる上松範康のそんな妄想から始まったプロジェクト『ヴィジュアルプリズン』は、2021年10月からテレビアニメが放送予定だ。ヴァンパイアたちによる、“ヴィジュアル系ライブバトル”を描いた作品だという。数々の人気作を手がける上松に加え、制作は『うたの☆プリンスさまっ♪マジ LOVE』シリーズや『「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」Rhyme Anima』を手がけたA-1 Picturesが担当することもあり、大きな注目を集めている。
ヴィジュアル系アーティストは、これまでにも様々な2次元の作品で描かれてきた。まず思い浮かぶのは、1997年に連載が始まった新條まゆの漫画『快感♥フレーズ』(1999年には『KAIKANフレーズ』としてアニメ化)に登場するヴィジュアル系バンド、Λucifer(リュシフェル)だ。ボーカリストの大河内咲也は、黒髪と青い瞳が特徴的で、傍若無人な俺様キャラとして描かれていた。他のメンバーも全員スレンダーな美形で、髪色は金、赤、紫、茶、黒とそれぞれ違う。衣装は黒が基本で、十字架のネックレスをつけている。
2013年にスタートしたサンリオによるキャラクタープロジェクト『SHOW BY ROCK!!』には、シンガンクリムゾンズというヴィジュアル系バンドが登場する。彼らは “痛い中二病”を自称するバンドで、ビジュアル面では、赤や黒の衣装にスタッズやベルトなどの装飾が施されたロックなテイストが多かった。
2015年に誕生した、人気男性声優とヴィジュアル系バンドのコラボレーションプロジェクト『FlyME project』では、黒を基調にまとめたダークな衣装のMEDICODEと、カラフルな衣装のDRINK MEという2つの対照的なヴィジュアル系バンドが描かれた。見た目がポップでカジュアルないわゆるキラキラ系のヴィジュアル系バンドは、実際のシーンでは2000年代から現在まで数多く生まれているが、DRINK MEのように2次元の作品に登場することは少なかったため、とても新鮮だった。
2017年に始動したラッププロジェクト『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』には、ヴィジュアル系バンド、アルゴξ(クシー)楽団のボーカリスト・四十物 十四が登場する。金と黒が混ざった派手髪とナポレオンジャケットがトレードマークの彼は、過去にいじめを経験したトラウマをもち、中二病的な言動で武装しているキャラクターである。軍服テイストのファッションは、実際のヴィジュアル系バンドの衣装としてもポピュラーで、中でもナポレオンジャケットは2010年前後に多くのバンドマンが着ていた。
そして2018年にスタートした『BanG Dream!(バンドリ!)』発のボーイズバンドプロジェクト『ARGONAVIS from BanG Dream!』に登場するFantôme Irisは、全員が社会人で構成されているヴィジュアル系バンド。フランス出身のボーカリスト・FELIXは、長い金髪に黒いマントのような長いジャケット、赤い薔薇のブローチと、浮世離れした貴族のような風貌である。