岡本信彦、石川界人、神谷浩史……今年の夏を冷やす、背筋も凍る“声優×怪談”コンテンツ
ここにしかない恐怖と情緒
“声優×本格怪談“をテーマにした人気シリーズ『西園寺古書堂怪奇譚』の第三弾、ボイスドラマCD『西園寺古書堂怪奇譚〜参ノ篇〜』にも注目したい。昨年夏に第一弾が発売され話題を呼び、今年2月には『弐ノ篇』を発表、今作で第三弾となる。
とあるビルの5階にある古書堂「蘆刹堂」の主人・西園寺鵺の元に、多彩な人物が怪談を持ち寄り語り合うという内容で、西園寺鵺を神谷浩史が演じ、これまでに神尾晋一郎、堀江瞬などが出演。今作には、内田真礼、小林裕介が出演し、思い思いに怪談を語る。キャラクターデザインは人気イラストレーターの「吠L」が担当し、脚本とBGMは「てにをは」が手がけるという。てにをはは、「古書屋敷殺人事件 feat.初音ミク」や「ヴィラン feat.flower」などで再生回数ミリオンを達成した人気ボカロPで、近年はAdoの「ギラギラ」の作詞作曲編曲を手がけたことでも知られる。一方ミステリーの小説家としても活動し、『女学生探偵シリーズ』や『妖怪少年探偵團シリーズ』などが人気だ。そんな、てにをはが作る怪談物語に、声優3人が極上の声と間を与え、ここにしかない恐怖と情緒が生まれている。
怪談は物語を耳で聴き、自分の経験と重ねながら想像することで恐怖が生まれる。人間の想像力によって恐怖を感じるわけだが、それには想像力をかき立てる声が重要だ。声優は、ドラマやキャラクターCD、ラジオドラマなど数多くの音声媒体を通して、まだ見ぬアニメやドラマなどの物語を、数多くの視聴者に想像させてきた。2019年にはNHKで、池田秀一、緒方恵美、神谷浩史、竹達彩奈ら人気声優が怪談を語る番組『声優×怪談』(NHK総合)が、2夜連続で送され話題となったことも記憶に新しい。またコロナ禍において、声優による朗読や読み聞かせの動画が数多くアップされたことで、声優の演技力の高さは一般の知るところとなった。怪談の語り部として、声優の抜擢は実に理にかなっていると言える。目を閉じて声に聞き入れば、背筋も凍るような不思議な世界が待っている。
■榑林史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。