野田あすか、みずから進んで開けたポップスのドア 「ココロノイロ」は“誰かとしあわせになる”音楽へ

野田あすか、新たなしあわせの求め方

 「ココロノイロ」はそれに続く第二弾。曲は野田と西尾の共作で、詞は野田が単独で書き、音楽塾ヴォイスの上野静香がボーカルを担当している。第一弾が「誰かと一緒に奏でるのは楽しいよ」と西尾が野田に示すものだとしたら、今回はその楽しさを知った野田が、みずから進んでポップスのドアを開けた1曲と言える。温かくて伸びやかなメロディやたっぷり聴けるピアノソロはまさに野田あすか。さらに見逃せないのが、ブリッジに登場するラップ風の歌詞だ。〈本当のこと言うとね とても怖いんだ〉から始まるフレーズは、本人の心の奥底を垣間見るようでヒリヒリする。でもそれは、「誰かと一緒に奏でる」ポップスに一歩踏み出した、たった今の野田の「ココロノイロ」に違いない。少しドキッとしながらも、きっと多くの人が自分ごととして反芻したくなるフレーズでもあると思う。

 これまで、野田はコンサートで、「手紙~小さいころの私へ~」や「生きるためのメロディ」といった自作曲を歌ってきた。前者は、自分の経験を語りつつ「見守ってくれる人がいることに気づいて」と苦境にある人たちに伝える曲。後者は、強い絆で結ばれた音楽への姿勢を表明する曲だ。それら一連の作品群と「ココロノイロ」は、明らかにフェーズが違う。自分の思いを伝えて「誰かをしあわせにする」音楽から、「誰かとしあわせになる」音楽に変わってきている気がするのだ。〈キミと並んで見えた〉や〈キミと向き合えば〉に見られるように、歌詞のベクトルも、自分の内面ではなく他者に向かっている。誰かが座るテーブルに素敵な音楽をサーブするホスト役としてのしあわせだけじゃなく、自分もそのテーブルに座って誰かと音楽という食卓を囲みたい。そんなしあわせの求め方が野田の心に芽生えたのではないだろうか。

 ポップスに取り組むことで、心を伝える以外にもたくさんある音楽の豊かな機能を、野田あすかはエンジョイし始めている。きっとそこから、今までとは視点の違ううれしいピアノ、生きてる音楽、しあわせな歌が、加速度的に生まれてゆくことだろう。この夏予定されている野田あすか with FRIENDSのミニアルバムが、にわかに待ち遠しくなった。

■リリース情報

「ココロノイロ」
作詞:野田あすか 作曲:野田あすか・西尾芳彦 編曲:熊木敏光 ボーカル:上野静香
2021年6月9日 配信スタート
配信はこちら

ミニアルバム
『ココロノウタ~Happy Together~』
2021年8月18日(水) 
価格:¥2,400(税込)
全6曲収録(曲順未定)

■関連リンク
YouTube公式チャンネル https://www.youtube.com/channel/UCqlDMe74wKVXCJ3-3ZsSKTw
ビクターエンタテインメント アーティストページ https://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A025994.html
Official Site https://www.nodaasuka.com/

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