EXILE ATSUSHI、普遍的な歌を追求する姿勢 「Amazing Grace」で伝える“人との繋がりの大切さ”
EXILE勇退後のEXILE ATSUSHI(以下、ATSUSHI)は、いわば人として生きていく上での“宿命”とも言うべき因果と向き合いながら、より普遍的な歌を追求するような楽曲を世に送り出してきた。昨年のアルバム『40~forty~』に新録された「輪廻」、そして直近の新曲「KAZE」もそうだ。そんな今のATSUSHIが稀代の名曲である「Amazing Grace」をカバーし、命に寄り添う在宅医の物語に華を添えることになったことには、ある種の必然というか、何かの巡り合わせを感じずにはいられない。
5月26日、東映映画チャンネルの公式YouTubeにてATSUSHIが歌う「Amazing Grace」の特別映像が公開された。同曲は全国公開中の映画『いのちの停車場』のオフィシャルイメージソングとして4月30日に配信リリースされ、EXILE公式YouTubeの方ではMVも公開されている。
吉永小百合が主演を務める『いのちの停車場』は、南杏子の同名小説を映画化したヒューマンドラマ。患者を“救う”ことに尽力する救命救急医であった主人公がある事情から実家へ戻り、患者を“送る”在宅医療の現場へ異動。様々な事情から在宅医療を選択した患者たちと向き合う姿を描く。特報映像や本予告映像ではFAKYのAKINAが歌う「Amazing Grace」が使用されていたが、公開直前の4月、新たにATSUSHIが同曲を歌唱することが決定。1つの作品において劇中には登場しない楽曲を2人の歌手が歌い、それぞれに異なるアプローチで表現する形となった。
遡れば200年以上の歴史を持つキリスト教の讃美歌であり、これまでに数えきれないほど多くの著名アーティストによってカバーされてきた名曲「Amazing Grace」。先に公開されていたAKINAのバージョンは、微細な歌唱のニュアンスにより少しずつ楽曲の表情が変化していき、やがて始まる勇壮なアレンジによって生命の脈動のようなものを感じさせる力強い楽曲に仕上がっていた。
一方、今回のATSUSHIが歌ったバージョンは比較的シンプルだ。讃美歌としての本質に忠実に、徐々に音像が広がっていく中でATSUSHIの柔らかく伸びやかなウィスパーボイスが響き渡り、聴き手の心を優しく包み込む。また、ATSUSHI自身もこの曲について「歌っていて“人生の最期”を感じた」(※1)とコメントしていたが、この素直な歌唱表現とシンプルな構成によって生まれる余韻には“生の儚さ”のようなものも感じられる。これは昨年の「輪廻」にも近しく、近年のATSUSHIらしい作風だ。