LiSA「紅蓮華」手掛けた草野華余子、感情を音楽に転置する才能 作詞作曲家・シンガーソングライターとしての真価

草野華余子、感情を音楽に転置する才能

 ここまで紹介したような作家性やメロディセンスの根源こそ、本人のみが知り得るところだが、愛情不足なことを感じやすく、自己肯定感が低いという過去の発言も(※2)。彼女はおそらく、そうした感情を音楽に転置する才能に優れているのだろう。また、2019年2月には、活動名義をカヨコから本名の草野華余子に改名。カヨコ時代は、シンガーソングライターとして活動しながら、自身の手掛けた楽曲を作家として提供する現実に大きなギャップを感じていたという。カヨコとして活動を始めてから十数年が経ち、ようやく自分自身の想いに整理がついたようだ。

 あわせて、彼女は自身のプロフィールにて、「ただのオタクですが、勇気を出してロックやってます」と名乗っている。前述したLiSAとの出会いや、本人の自己分析を交えた発言を踏まえるに、草野の音楽はやはり勇気を出す(あるいは勇気を振り絞らなければならない)状況に置かれることで、 "カヨコ節”といった自身の真価を発揮することが多いのかもしれない。

 そんな草野は今年1月、前作より9年ぶり・改名後初となるフルアルバム『Life is like a rolling stone』を発表。同作は、歌謡曲や演歌の流れを引き継いだ“純J-POP”をテーマに、30代後半を迎えたからこそ滲み出るような、音楽活動を通して感じた人生の“エグみ”を、あくまでもポップかつロックに描いた一枚に仕上がっている。アルバム内でも特にロック方面に傾倒した「Trigger」や「A.I.N」などを聴けば、“カヨコ節”にも自然と気がつくはず。

 加えて、草野は表題曲「Life is like a rolling stone」で、聴く人と自分自身を〈まだ頑張れるよ〉と優しく鼓舞し、作品の幕引きを飾る「マーメイド・ララバイ」では、信じる道を歩み続けてほしいと、誰かの心をそっと支え続ける。彼女が手掛けた楽曲すべてを網羅した共通点とはいえないが、草野の音楽はどれほど転んでも起き上がるような不屈の精神で一貫していると感じられた。

 「ただのオタクですが、勇気を出してロックやってます」と自らを語る草野華余子。シンガーソングライター、そして作詞作曲家として、多方面で活躍する彼女の音楽には、これからも誰もが勇気づけられ、明日を生きる活力を見出していくに違いない。

(※1)https://spice.eplus.jp/articles/266531
(※2)https://skream.jp/interview/2021/02/kusanokayoko.php

草野華余子 オフィシャルサイト

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