『ギヴン』『バクテン!!』音楽で注目集める新進気鋭の才能 センチミリメンタル、アニソンシーンに爪痕残す確かな表現力

センチミリメンタル、アニソンシーンに爪痕残す才能

 センチミリメンタルが新シングル『青春の演舞 / nag』を発売した。今シングルはフジテレビ“ノイタミナ”オリジナルTVアニメ『バクテン!!』のオープニングテーマを含む両A面で、センチミリメンタルとしては3枚目のシングル。「青春の演舞」は、前へと向かうまっすぐな気持ちをみずみずしい爽やかなサウンドに乗せて歌った一曲で、若さあふれるMVの青春感も魅力だ。青春時代のキラキラとした生命力を、疾走感のあるサウンドと華麗なパフォーマンス、ダイナミックかつ繊細な映像によって表現している。

センチミリメンタル 『青春の演舞』 Music Video

 センチミリメンタルとは、温詞(あつし)によるソロプロジェクト。温詞は作詞・作曲・編曲に加え、ボーカルやピアノのみならず、ギターやプログラミングに至るまですべてを一人で手がけるマルチプレイヤーだ。もとはバンドを組んでいたが、メンバーの脱退とともに楽器を習得していったという。現在はソロで活動し、今作のようなアニメ主題歌から楽曲プロデュースまで一人で行っている。デビュー前は”ねぇ、忘れないでね。”としてオーディション『イナズマゲート2015』に参加し、見事グランプリを獲得。早くから頭角を現していた。

 そんな”センミリ”が最初に注目を浴びたのが、アニメ『ギヴン』(フジテレビ系)のオープニングテーマに「キヅアト」を書き下ろした2019年のこと。ロックバンドの青春群像劇を描いた『ギヴン』の世界観に、心を深くえぐるようなダークな歌詞がぴたりとマッチ。と同時に、同作の劇中バンド・ギヴンの作品もプロデュースしたことで新人ながらもその高い作曲力に注目が集まった。ギヴンはSpotifyでの月間リスナーが100万人を超えるなど、異例のヒットを記録。当時はまだ無名であったにも関わらず、アニソンシーンに鮮烈な印象を残した。

センチミリメンタル 『キヅアト』 Music Video

 センチミリメンタルの作品の特徴は、何と言ってもその歌詞の強さとメロディの良さ、そして優れたボーカル表現である。ルーツにはレミオロメンやクラシック音楽があるという。トレードマークとでも言うべき躍動感に満ち溢れたバンドアンサンブルや、思わず口ずさみたくなるような美しいメロディは、そうしたルーツを持つゆえだろう。

 そして何よりも歌詞だ。YouTubeに投稿された本人のコメントにもあるように、今作の「青春の演舞」で歌われているのは”希望”だけではない。一見、明るく爽やかなだけの曲のように見えて、生きていく上では避けて通れない”痛み”や”苦悩”といった暗い部分もこの曲はしっかりと描いている。たとえば、冒頭の〈泣いて 転んで 跳んで 回って〉の畳み掛けるようなフレーズは、非常に強く脳裏に焼きつく秀逸な歌い出し。キャッチーでありながら、深く心に刺さってくる。

 また、サビでの〈何回だって立ち上がろうぜ〉〈何回だってトンネルの向こうへ〉といった前向きな言葉運びにも、痛みを乗り超えようと必死にもがく力強い姿勢が言葉の一つ一つに詰め込まれている。何かを成し遂げるためには挫折も経験するものだと、この曲は聴き手に強く語りかける。ふわっとした単なる希望の歌ではない、泥臭いリアリズムがそこにある。そして、そうした”痛み”や”苦しさ”にフォーカスした言葉を、あくまでポジティブなものとしてリスナーに届けられる前向きな表現力も持ち合わせているのだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる