back numberが『恋はDeepに』主題歌「怪盗」のドラマチックな歌詞で描く、“前へ踏み出す大切さ”
back numberの新曲「怪盗」が5月24日にリリースされた。同曲は4月にスタートした水曜ドラマ『恋はDeepに』(日本テレビ系)の主題歌。このドラマで運命的な出会いを果たす、石原さとみ演じる海洋学者・渚海音と、綾野剛演じる大企業の御曹司・蓮田倫太郎の回を追うごとに加速していく恋心を、back numberの爽快なメロディが盛り立てる。
『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)や『私の家政婦ナギサさん』(TBS系)など、よくある日常にちょっとしたスパイスを加えたラブコメディに定評のある脚本家・徳尾浩司が手がけた本作は不思議な物語だ。巨大不動産会社の御曹司で、星ヶ浜海岸でのリゾート開発を進める倫太郎と、愛する海と魚たちの暮らしを守るため、環境に負荷がかかる開発をどうにか阻止したい海音。対立する二人の第一印象は互いに最悪だったが、次第に惹かれ合っていく......という往年のラブストーリーでありながら、海音は海を守るため人間界に現れた“人魚姫”(かもしれない)というファンタジー要素も含まれている。しかも、海音は長く地上では生きていけず、倫太郎と一緒にいられる時間は残りわずか。
そんな期間限定の恋を描いた本作のラストに合わせて流れる「怪盗」は、シンセサイザーを使用したキャッチーなイントロで聴く者をよりドラマチックな気分にさせてくれる。今回、楽曲のプロデュースを務めたのは小林武史。back number×小林というタッグを見て、まず思い浮かべるのは本作と同じく石原さとみが出演したドラマ『5→9~私に恋したお坊さん~』(フジテレビ系)の主題歌「クリスマスソング」だろう。そして、次に『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)の主題歌「HAPPY BIRTHDAY」。どちらも大切な人を思いながら特別な1日を過ごす切なさを歌ったラブソングで、誰もが自己投影できるストーリー性のある歌詞と、感情を高める美しい旋律が印象的だ。
清水依与吏(Vo/Gt)は今作でも人魚姫をはじめ、シンデレラやかぐや姫など、いつかは帰る場所がある“お姫様”をなんとか引き留めたいと願う、“王子様”の視点で一つの物語を描いた。一方で、疾走感のある爽やかな、それでいて何故か切なく心に響くサウンドは「高嶺の花子さん」や「SISTER」とも共通する。ただ、一つだけ大きく変わっているのはその“攻め”の姿勢だ。「怪盗」というタイトルが物語るように、この主人公はお姫様のアクションを待つ王子様ではない。例えるならアラジンのように、箱の中に閉じ込められたお姫様を広い世界へと連れ出す“怪盗”。「高嶺の花子さん」では〈飛び出してきてくれないか/夏の魔物に連れ去られ 僕のもとへ〉、「HAPPY BIRTHDAY」では〈君にも教えてあげたいけれど結局/教わるのは俺だろう〉と受け身だったり嘆いていたback number楽曲の主人公像だが、今作では〈君が想像した事ないくらい/眩しい世界を見せてあげる〉と自らヒロインの手を取って走り出す。これまでback numberのラブソングは誰かを愛しく思うからこそ、気づかされる自分の“弱さ”に寄り添ったものが多かった。しかし、恋が与えてくれるのは苦しみだけではない。今作でback numberは途端に世界がきらめき出し、〈君がいれば僕に不可能なんか無い〉と断言してしまうような恋のパワーを描いているのだ。