乃木坂46 2期生 渡辺みり愛&伊藤純奈がグループに残したもの 紆余曲折のアイドル人生を辿る

 そんな渡辺に転機が訪れる。2017年にリリースした17thシングル『インフルエンサー』のカップリング曲「風船は生きている」で初センターを務めたのだ。「ここまで来るには平坦ではなく、長い年月がかかりました。諦める事なく応援してくれる皆様には感謝しきれません 常に油断が出来ず、頑張っても頑張っても報われない事が多い現実です それでも、私はしがみついて目指す場所へ行きたいです」と当時の心境をブログで綴っている。そしてアンダーライブにおける渡辺は、3期生にとって頼もしい先輩となっていた。アンダーメンバーによるコンピレーションアルバム『僕だけの君〜Under Super Best〜』のインタビューで寺田が証言している「みり愛は3期生で言うと大園桃子などが同い年なんです。1期生・2期生の中でずっと最年少ではあったけど、それでも5、6年やってきて、経験値はありますから。でも、みり愛って"先輩"っていうよりも、すごくフレンドリーなので、3期生としても、ちょっとどうしていいのかな…というときに、頼りがいがあるんじゃないかな。楽屋で相談を受けているのを見かけます」。先輩の背中を追いかけて支えてもらっていたように、今度は自分が後輩を引っ張っていく役割を担っていたのだ。

 この頃、伊藤にも大きな変化が起こる。『犬夜叉』、『MIDSUMMER CAROL』、『牙狼<GARO>』、『七色いんこ』、『GIRLS REVUE』と立て続けに舞台出演を果たし、女優として頭角を表し始めた。『七色いんこ』では主演も務めている。伊藤は舞台との出会いによって「自分の武器がひとつできた」と手応えを感じた。「主演の時は演出家さんに何も言われなかったんですよ。いつもなら稽古で色々と言っていただけるものなんですけど。後で聞いたら、『主演なんだから、わざわざこちらが言わなくても自分で考えてできる人だと思ったから、何も言わなかったんだよ』と言われて。そういう風にみてもらえるようになったという意味でも成長したんでしょうね」という発言も残している。中でも2019年に上演されたアガサ・クリスティの傑作『オリエント急行殺人事件』では、出演者全員が先輩という環境の中で演技をしたことが自信に繋がったという。

 同年、渡辺もチャンスが舞い込んできた。23rdシングル『Sing Out!』で初の選抜入りを果たしたのである。当時、筆者が『BUBKA』でインタビューをした際に「中1で乃木坂に加入して、苦しいこともあったけど、それは若かったからこそ乗り越えられていたのがあって。もう後輩もいるし、若さを頼りにできない今が本当の勝負どきというか。それと選抜に入ったことで、ファンの方やスタッフさんもですけど『もっと前から選抜に選ばれていても良かったはずだと思いながら、ずっと待っていたよ』という言葉が一番きましたね。待たせて申し訳ないなと思ったし、みんなが『みり愛は選抜に入ってもいい人だよ』と言ってもらえる環境にいることは嬉しいなって。もう7年やってますからね。どうしても涙がこみ上げます」と長年の苦労が報われた喜びを語ってくれた。

 その時のインタビューで印象に残ったやり取りがある。加入当初は最年少メンバーだったこともあり、妹キャラの立ち位置だった渡辺。撮影で用意される衣装もほとんどがピンクのスカートやフリフリのワンピースで「可愛いアイドル・渡辺みり愛」を求められていた。「私の印象って「妹」「幼い」「ピンク」だったんですよ。最初はそれで良かったんですけど高校を卒業しても、まだ言われるのかと思って。本当はパンツスタイルが好きだし、系統だとモード系の雑誌の雰囲気が好きで。本音を言えば、そっち系の撮影をいっぱいしたい。だけど自分のやりたいことと、周りの求めていることが違いすぎて、一時はすごく悩んでました」。今はどうなのか尋ねると「7年やっていると、いろんな服を着させてもらえたんです。それこそロリータっぽい服とか、猫耳とか、赤ちゃんっぽい格好とか。それって一般の生活を送っていたら着る機会はないじゃないですか。アイドルをやっている今、あとはこの年齢でしか着れないんだったら『やりたいこと』『やりたくないこと』じゃなく、楽しめばいいやって方向転換をしました」と清々しい表情で話していた。それから2年後、渡辺はアイドルの衣装を脱ぐことに決めた。

 改めて、2人が過ごしてきた8年間は順風満帆だったとはいえないかもしれない。だが、間違いなく乃木坂46にもたらした功績は大きい。そしてアイドル人生を全力で駆け抜けたからこそ、これからは“等身大の自分”として歩こうとしているのだと思う。改めて、渡辺と伊藤の卒業を心から祝福したい。

※記事初出時、一部記述に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

※【引用・出典一覧】
『BRODY  2017年10月号』https://www.brodymag.com/posts/2809328/
『ABEMA TIMES』2018年 https://times.abema.tv/news-article/3490050
『BRODY2019年6月号』http://www.byakuya-shobo.co.jp/page.php?id=5943
『BUBKA2019年9月号』https://www.bubkaweb.com/posts/6678210/
『EX大衆2021年4月号』https://www.futabasha.co.jp/magazine/ex_taishu.html
乃木坂46 渡辺みり愛 公式ブログ https://blog.nogizaka46.com/miria.watanabe/
乃木坂46 伊藤純奈 公式ブログ https://blog.nogizaka46.com/junna.itou/

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