新譜連載「本日、フラゲ日!」
日向坂46、あいみょん……5月26日リリースより新譜5作をレビュー
浅井健一(G/Vo)、UA(Vo)により2000年に結成され、わずか1年の活動で強烈なインパクトを放ったAJICOが、TOKIE(Ba)、椎野恭一(Dr)を含めたオリジナルメンバーで20年ぶりに復活、新作EP『接続』をリリース。ブラックミュージックに根差した土着的なグルーヴが遥かな彼方にまで広がる「地平線 Ma」、繊細さと広大さを同時に感じさせるギターフレーズと空高く浮遊していくようなボーカルが溶け合う「惑星のベンチ」、官能的なブルーズとともに、愛を包み込む歌が響く「接続」、まるでベンジーからUAに向けられた手紙のように聴こえる「L.L.M.S.D. -Lonely Lonely Magic Smiley Dress-」。既存の価値観や常識が気持ちよく砕け、生きることの本質に近づく感覚こそがこのバンドの魅力だと再認識させられる。(森)
オルタナR&B的なグルーヴと歪みまくったギターが共鳴する「ねずみ浄土」、強靭なビートと心地よい音響を共存させたバンドサウンドが突き刺さる「Gifted」を含むGRAPEVINEの2年半ぶりのオリジナルアルバム『新しい果実』。セルフプロデュースに戻り、ソングライティング、アレンジ、演奏に時間をかけて向き合った結果、GRAPEVINEの個性ーールーツに根差しつつ、モダンなロックサウンドを更新し続けるーーが濃密に込められた作品となった。コロナ禍によって顕在化した社会の脆さ、知らず知らずのうちに精神的な孤立を深める現代人の姿を、文学的なメタファーを駆使して描き出す田中和将(Vo/Gt)の歌詞も充実。知性と肉体性と奔放な実験精神がせめぎ合う、新たな代表作の誕生だと断言したい。(森)
川谷絵音、蔦谷好位置などから絶賛される岡山出身のシンガーソングライター・さとうもかの煌めく才能は、デビューシングル『Love Buts』のタイトル曲を聴けば一発でわかるはず。柔らかい手触りシンセとともに〈間違ってないよと もっと強く言ってよ〉と歌い出した瞬間、快楽的なグルーヴが発生。恋人との別れを予感し、何でもないけど宝物のようだった日々に思いを馳せつつ、新しい日常に向かう決意を綴った歌詞を、しなやかで心地よいフロウによって描き出している。SIRUP、iriなどの楽曲を手がける森善太郎の、エレクトロとオルタナR&Bをつなぐトラックも秀逸。日本語とブラックミュージックを自然に混ぜ合わせるセンスは藤井風にも通じているが、岡山にはそういう磁場が働いているのだろうか?(森)
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。
■一条皓太
出版社に勤務する週末フリーライター。ポテンシャルと経歴だけは東京でも選ばれしシティボーイ。声優さんの楽曲とヒップホップが好きです。Twitter(@kota_ichijo)