imdkmのチャート一刀両断!
YUKI、海外クリエイターも名を連ねた新作がチャート好調 “歌の存在感”が聴きどころに
打ち込みを基軸としたパキッとしたビートの上ではラップというか語りに近いようなフィーリングも込めてタイトにアプローチし、あるいは生演奏のアンサンブルである「泣かない女はいない」では呼吸のように言葉が伸縮して、大胆な字余りでギュッと想いを詰め込んだりもする。作詞だけでなく作曲も手掛けている「灯」の伸びやかに上下するメロディと歌は、他の曲と比較しても、自分の声や歌の魅力をよく把握していることを伺わせる。ラストを飾る「はらはらと」は6/8拍子の打ち込みのビートに乗る緩急の豊かなボーカルがとてもドラマチックだ(ビート自体もシンプルながら盛り上げるところはガッツリ盛り上げるケレン味がある)。どう受け取ればいいものか掴みあぐねていた作品だったけれども、なんということはない、YUKIの声が一本の筋を通してくれているのである。
特設サイトに掲載されているインタビューでYUKIはこう語っている。いわく、多彩な提供楽曲に向き合った『forme』で自らの「歌手としての可能性」を再確認し、Chara+YUKIの『echo』ではダンスミュージックと向き合うことで「メロディとリズムの関係性」などを学ぶことができた。近作をそうまとめた上で、「私は自分からは出てこない曲に自分の言葉を乗せて歌うのが好きなんだな、とあらためて思いました。そして、自分の知らない世界をもっと知りたくな」ったのだという(※1)。
一曲一曲のなかでYUKIがどんな「知らない世界」に出会い、またそこでどんな歌を紡いでいるのか。そこに耳を傾けると、本作の聴こえ方は一味違ってくる。
※1:https://www.yukiweb.net/Terminal/Biy/Mlg/
■imdkm
1989年生まれ。山形県出身。ライター、批評家。ダンスミュージックを愛好し制作もする立場から、現代のポップミュージックについて考察する。著書に『リズムから考えるJ-POP史』(blueprint、2019年)。ウェブサイト:imdkm.com