adieu「よるのあと」が想い起こさせる大切な存在 孤独に寄り添う歌声を聞く

adieu「よるのあと」の歌声を聞く

 そもそも上白石は、adieu以前からすでに歌手としての才能を花開かせていた。2016年から出演していた『午後の紅茶』のCMではChara「やさしい気持ち」やaiko「カブトムシ」、HY「366日」といったラブソングの名曲を次々にカバー。ややあどけなさの残る、まっすぐで純真無垢な歌声に、多くの早耳な音楽ファンも虜になった。その後も菅野よう子が編曲する「パプリカ」のボーカルに選ばれたり、FM802 春のキャンペーンソング「メロンソーダ」にaikoや藤原聡(Official髭男dism)らとともに参加したりと、音楽関係でのオファーも増していく。しかし、これらはあくまで“上白石萌歌”としての歌唱を期待されてのこと。より密接に音楽と触れ合いたいと願っていた彼女には、素のままの自分をさらけ出す場としてadieuが必要だったのかもしれない。adieuのコンセプトとは“ひとりの「表現者」としての側面を創り出すクリエイティブコンソーシアム”。ただし、無理にキャラクターを設定したりするのではなく、あくまで上白石の持つ別の顔として育てていくという。女優である彼女が“昼”なら、adieuは“夜”。表裏一体の存在だが、互いに縛られることのない自由を担保されてもいる。自らの感性の赴くままに奔放に表現を追求する姿を通して、私たちはこれまで知らなかった上白石萌歌に出会うことになるだろう。そして今後、女優としてのキャリアを積み重ねていけばなおさら、adieuとして見せてくれる世界にも注目が集まるはずだ。

 4月からは、TOKYO FM『SCHOOL OF LOCK!』内の『GIRLS LOCKS!』で毎月3週目のMCを担当するほか、J-WAVEでも新番組「#LOVEFAV」が始まり、adieuとしての活動も本格化していくと予想される。そうなると上白石萌歌とadieuの境界は、ますます近づき溶け合っていくようにも感じられるが、果たしてどのような方向に進むのだろうか。いずれにしろ、彼女が真っ白なキャンバスを前に描き出そうとしているイメージは、新たなアーティスト像として、これからのJ-POPシーンのシンボルとなるに違いない。

■渡部あきこ
編集者/フリーライター。映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などカルチャー全般から旅、日本酒、伝統文化まで幅広く執筆。福島県在住。

『adieu1』

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adieu
『adieu1』
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M1 強がり
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M3 蒼
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