菊地成孔率いるDC/PRGが活動に幕 “最新が最高”を更新したラストライブを見た

菊地成孔率いるDC/PRGが活動に幕 “最新が最高”を更新したラストライブを見た

 この日のバンドメンバーは菊地、オリジナルメンバーの坪口昌恭(Key)、大儀見元(Per)、津上研太(Sax)、さらに小田朋美(Key)、大村孝佳(Gt)、近藤佑太(Ba)、千住宗臣(Dr)、秋元修(Dr)、高井汐人(Sax)、類家心平(Tp)、“新加入”のMELAW。これが最後というだけあり、“最新で最強”の布陣による演奏——技術、集中力、気合いを含めーーまさに完璧だった。

 特に素晴らしかったのが、「CIRCLE/LINE」だ。原曲は、菊地雅章の伝説的名盤『SUSTO』(1980年)の収録曲。アルバムのリリース記念ライブに行き、(楽曲が難解すぎるため)まったく演奏することができない様を見た菊地少年(当時17歳)が「この曲を自分のバンドで演奏し、大勢のクラウドが踊る」というイメージを得たことが、DC/PRGの起源になったことはファンにとっては有名な話。ライブでもほぼ欠かさず演奏されてきた楽曲だが、「この曲が演奏されることは、おそらく2度とないんだろうな」と思うと、さすがに感傷的な気分が芽生えてしまった。

 「CIRCLE/LINE」と「HARD CORE PEACE」をつなぐ、大儀見のソロも最高だった。10分以上に渡ってプリミティブなリズムを叩きまくる大儀見に相対し、カウベルで合いの手を入れる菊地の姿にもグッと来てしまった。療養のためにバンドを離れた時期もあったが、大儀見がDC/PRGのドグマ的存在であったことは疑いようがない。

 本編ラストは「HEY JOE」。初期から演奏されているこの曲は(ジミ・ヘンドリックスのカバー)、ライブのたびにアレンジが変更され、“最新が最高”を更新してきた。変拍子、ポリリズムを自在に組み込みながら、超絶テクニックを駆使したソロ演奏を交え、ダンスミュージックとして機能させる。ショルキーを持った坪口、速弾きをブチかます大村がステージ前方に出てきて、観客を煽りまくるシーンを含め、このバンドの音楽性、ステージングの魅力がもっとも強く発揮された楽曲だったと思う。

 アンコールの前に菊地は、15分にも及ぶ口上をぶった。「改めて言わせてもらう。最後の俺たちが最新で最強だ。君たちのジャッジはどうかな?」「やろうと思えばやれるよ。しかし、博打は辞め時が肝心だ。諸君らが我々の際のフローであり、旅路の果てに合流してくれた君たちにシェイクハンドとキスを送りたいね」といったフレーズを響かせ、観客が声援で応える。もっとも心に残ったのは、「ワイルドに生きよう。人生は短い」「君らは今いくつで、20年前はいくつだった? この20年間で解放されたかね? それとも拘束されかね? 我々は解放戦線に立ち続けた」という言葉だった。

 “混迷を深める社会”がデフォルトになり、現実逃避か過剰適応を選ばざるを得ない現在において、アジャストとアゲインストを同時に行い、最強のダンスミュージックによる解放を是とするDC/PRGの存在はーーそれがギグの最中だけであってもーー生の実感を与えてくれたのだと思う。

 ラストナンバーは「MIRROR BALLS」。ミラーボールの眩い光、近藤のスラップベースを軸にした快楽的なファンクグルーヴ、解放的なホーンセクションが共鳴するなか、DC/PRGの最後のステージは幕を閉じた。

 エレクトリック・マイルス、ファンク、アフロポリリズムなどを肉体的に融合させたダンスバンドとして、1999年にDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENとして結成。以降、菊地成孔DCPRG、DCPRG、dCprGとバンド名を変えながら活動を継続させてきたDC/PRGはついに解散の日を迎えた。最後のライブでも、キャリアを象徴する楽曲をアップデートさせ、4本の管楽器による強烈で極上のアンサンブル、坪口と小田による音色とフレーズの交歓、リズムリテラシーの高さと最高峰のテクニックに裏打ちされたツインドラムなど、“すべてが見どころ”と称すべきステージを体現してみせた。

 MCのなかで菊地は、「このなかに音楽をやってる奴もいるだろうけど、原理を知り、イマジネーションがあれば、君にもやれる」と語り掛けた。DC/PRGの演奏を聴くことはもうないが、このバンドの軌跡とそのなかで生み出したDNAを次の世代のミュージシャンが受け取り、異なる形で具現化されることになるだろう。

 DC/PRGは、2019年に開催された20周年ツアーをほぼコンプリートした7枚組ライブアルバム(ラストツアーの音源が聴けるQRコード、オリジナルメンバー4人の“指人形”が付いたボックスセット)をリリース予定。こちらもぜひチェックしてほしい。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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