さとうもか、新たなJ-POPの担い手へ 配信ライブでの“距離の近さ”と“自由な表現”

さとうもか、新たなJ-POPの担い手へ

 3月19日、さとうもかがオンラインライブ『Sugar Science Station』を開催した。さとうがパーソナリティを務める架空のラジオ番組が公演に密着するという形式で行われたこの日のライブは、配信ならではの手法を織り交ぜたにぎやかなものに。「ずっと言いたかったことを告白する」との予告通り、最後には<EMI Records>からのメジャーデビューが発表され、メモリアルな一日となった。

 開演の5分ほど前からインスタライブが始まり、オンラインライブの配信開始とともに登場したDJのさとうと二元中継のような形になって、「Glints」を歌いながらステージに上がるという凝った演出から本編がスタート。「old young」ではキーボードを弾き、「オレンジ」では魔法のステッキを振って、魔法少女アニメのテーマ曲風のトラックが流れる中、クラシックギターの指弾きとともに歌うなど、序盤から様々な手法で楽しませてくれる。

 ハンドマイクで歌った「Poolside」、〈恋をすると人間になっちゃうって/ママの言ってた事は本当だね〉という歌詞のキャッチーさも手伝って、TikTokでヒットした「Lukewarm」に続き、名バラード「ラムネにシガレット」は情感たっぷりの弾き語りで披露。かと思えば、テクノポップな「パーマネント・マジック」ではパラパラを踊ったりと、曲によってコロコロ表情が変わり、ややシュールなユーモアのセンスも光る。

 ここまで見ただけでも、やはり面白いシンガーソングライターなのは間違いない。恋愛の機微を巧みに綴ったラブソングはaikoのようだし、特徴的な歌声は荒井由実時代のユーミンにも通じるものがあるし、ジャズマナーのコードワークも含めれば、シティポップ的な雰囲気もある。その一方で、打ち込みのトラックベースの楽曲は、ヒップホップやネット系のシンガーとの親和性も感じさせ、すでにボカロPでもあるくじらとコラボしたりもしているが、ゆるふわな雰囲気とエモーションを併せ持った歌声は非常に現代的。様々な文脈と接点を持ちつつも、そのどれでもない存在感は稀有だと言っていいだろう。

 もう一つ感じたのは、さとうもかはクラスにいたら絶対に仲良くなりたいタイプの女の子だということ。「アーティスト」というほどお高くとまっている感はゼロだし、とはいえ一般人と言うには明らかに音楽的な才能を持っていて、独自のユーモア感覚もあり、一緒にいたらきっと何か面白いことが起きると思わせてくれるタイプだ。SNSの時代=コミュニケーションの時代において、ミュージシャンがファンからの支持を得る上で「距離感」はとても重要だが、さとうは「近さ」を感じさせつつ、自由に自身を表現する姿に感動し、勇気づけられる人も多いはず。その部分がスペシャルだなと、ステージを見ながら思った。

 ここで一度DJコーナーに戻り、事前に募集をした「オワタ......と思った瞬間」をテーマにトークを繰り広げると、「サーティーワンアイスクリームのCMソングを意識して作った曲」だという「アイスのマンボ」をマラカスを持ちながら歌う。その最中にDJのさとうがアイスの大食いに挑戦するという小ネタも挟みつつ、中盤はフロアに組まれた部屋風のセットでの弾き語りコーナーへ。まずは「友達」と「My friend」を続けて歌う。フォーキーな「友達」が荒井由実を連想させる一方で、「My friend」のフロウはR&Bやヒップホップからの影響も感じさせるという対比が面白い。

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