THE RAMPAGE『REBOOT』はファンと向き合ったからこそ辿り着いた新境地

  今作を通して振り返ると、2020年のTHE RAMPAGEの音楽的魅力を紐解くキーとなる楽曲は、むしろカップリングとして収録されたものに多かった印象がある。もちろん表題曲だった「FULLMETAL TRIGGER」「INVISIBLE LOVE」「FEARS」「MY PRAYER」も楽曲群の中では間違いなく異彩を放つものであったが、それを加味してもなお印象深かったのは、『FEARS』のカップリング曲「FAST LANE」だ。当初から取り入れてきた西海岸系ヒップホップのテイストを改めて捉え直したこの曲は、彼らにとってもファンにとっても、重要な役割を果たしたように思う。事実、配信ライブではたびたび重要な場面で演じられており、その演出の影響もあってか、『REBOOT』豪華盤に収録されたライブ『RMPG PEEPS -LIVE WITH YOU 2020-』のセットリストを決める投票では1位に挙がった。名実ともに彼らの代表的なライブチューンへと成長していったのだ。

THE RAMPAGE from EXILE TRIBE / FAST LANE(LYRIC VIDEO)

 その他にも、アンビエントな音色が主体のチルソング「ESCAPE」は、オートチューンを多用したボーカルが特徴的な良曲であるし、ディープハウス調の「BAD LUV」も新境地を開拓していた。無論、それらの楽曲を歌いこなしていくごとに、彼らの表現力も成長していった。これらの楽曲全てを踏まえて、グループとしての音楽表現をアップデートしていくことが『REBOOT』であるとするならば、今後もさらなる進化が期待できるはずだ。

 そもそも『REBOOT』とは何なのか、というところに立ち返ると、やはり先述した通り“音楽表現の再構築”ではあるだろう。ただ、新録曲「SILVER RAIN」「BOND OF TRUST」と豪華盤の映像特典から、ダブルミーニングのもう片方がより鮮明に見えてくる。それは、“コロナ禍を乗り越えた先の未来へファンを連れていく”ということだ。

 豪華盤収録の特典は、ファンからの質問も取り入れつつ、結成から現在までを振り返るトーク映像や、ファン投票で決めたセットリストで収録した最新のライブ映像。その中にはファンから歌声を募り、集めた音声と一緒に演じた楽曲もあった。今作に触れる各所のインタビューでも、彼らは「ファンの皆さんと作ったアルバム」と口を揃えて言う(※2)。

 かつてない波乱が襲った2020年を経た彼らはまず、その間も自分達を支えてきたファンに向き合うことを選んだ。それは冒頭に引用した川村の言葉、そのままの姿勢でもある。自分たちを足元から見つめ直し、新たに進んでいく道のりのその先へ、ファンを連れていく。その明確な意志の結実こそが『REBOOT』なのだ。

1:https://times.abema.tv/news-article/7046376
2:『Out of MUSIC』Vol.70 2021年4月号ほか

■日高 愛
1989年生まれの会社員。

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