YOASOBI、ゆるぎない居場所を掴み取った今 一期一会の“ライブ”に昇華した初ワンマンレポ

YOASOBI初ワンマンライブレポ

 2月14日、YOASOBI初のワンマンライブ『KEEP OUT THEATER』が開催された。

「本日はYOASOBI『KEEP OUT THEATER』にご来場いただき、まことにありがとうございます。本公演中のご飲食、過ごし方は、お客様の自由でございます。みなさまも一緒に、一度限りのこの夜をお楽しみください」

 映画館さながらのナレーションの後に映るのは、どこかの建設現場のようだ。そこへAyaseとikura、そしてバンドメンバーが現れ、エレベーターに乗り込む。たどり着いたのは、ビル群と走っていく電車の夜景を見下ろす場所。

 「YOASOBI」という文字を象ったオブジェをバックにikuraがアカペラで歌い始めたのは「あの夢をなぞって」。バンドメンバーのいる場所へと移動すると、背後の壁面にはプロジェクションマッピングの花火が映し出される。

 「YOASOBIの1stライブ、『KEEP OUT THEATER』へようこそ!」と声を上げて、すぐ次の「ハルジオン」へ。2曲を立て続けに聴いて驚くのは、ikuraのボーカルの安定感だ。昨年末の『NHK紅白歌合戦』でも生歌を披露していたが、音源さながらの歌声で、これが初めてのライブと思うと恐れ入る。

 MCに入り、「YOASOBIのライブパフォーマンスはこれが初です」「半年間準備してきましたからね」と語り合うikuraとAyase。今回の会場について、新宿ミラノ座の跡地であり、新しい劇場を建設中の現場であると説明し、タブレットで視聴者からのリアルタイムのコメントを読む2人。「おしゃれやん」というコメントを拾って、本日の衣装について触れる。ikuraとAyaseは白のMA-1に、バンドメンバーは黒のつなぎにそれぞれがスプレーで装飾した、世界に一つきりのオリジナルだという。

 「ずっと同じ部屋で暮らしてきた2人の別れの朝を描いています」と歌いだすのは「たぶん」。ikuraは現在20歳。MC中は年相応のあどけなさの残る表情と話し方をしているのが、歌いだした瞬間に“YOASOBIのボーカリスト”に切り替わるのが圧巻だ。ikuraの歌声は柔らかく透明感があるが、どこかフラットでもある。同居していた2人の別れを描いたこの「たぶん」などは特に、違う人が歌えばもっとウェットなものになってしまうだろう。YOASOBIの楽曲の、湿っぽくなりすぎない絶妙な質感は、ikuraのこの声によって実現されている。

 そこからピンクや黄色、青の鮮やかなネオンの光に切り変わり、柔らかな音で鳴らされるのは「ハルカ」。マグカップが1人の少女の人生を見守る鈴木おさむの小説『月王子』を原作としているところから、メンバーが視聴者と一緒にマグカップで乾杯することに。ikuraは自分のマグカップの中身を確認しようとして乾杯前に先に飲んでしまい、メンバーの笑いを誘った。

 「周りの人に言えない悩みや葛藤をみなさんも抱えているんじゃないかと思うんですが、皆さんがそれをさらけ出せるような、背中を押せるような曲を届けられたらと思います」という紹介で始まるのは、動物たちによるヒューマンドラマを描いたアニメ『BEASTARS』のオープニングテーマ「怪物」だ。ステージはスモッグが焚かれ、ビビットな赤い照明が足元を照らす、妖しげな雰囲気に。カメラワークもアングルがめまぐるしく切り替わり、アップテンポで不穏な曲を盛り上げる。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる