“ポスト嵐”が生まれる鍵は世界進出にあり? アイドルグループの課題と今後の行く末を占う
多チャンネル時代におけるアイドルグループの課題
2020年12月31日、国民的アイドルグループと呼ばれて久しい中、嵐が活動を休止しました。嵐の活動休止発表以降、「ポスト嵐」という言葉も徐々に目にするようになってきました。
私自身は、ファンがどれだけ「ポスト嵐」という言葉を意識しているか、正直疑問に思っています。ファンはそれぞれの魅力に惹かれて、アイドルを応援しています。「ポスト嵐」という言葉は、アイドルを外野から見ている人の関心事であるように思えるからです。
一方で、世間一般では「嵐のような、長きに渡り知名度や売り上げを誇るグループ」を「国民的アイドルグループ」と認識しているようにも思います。そのため、自分たちの応援するアイドルがもっと多くの人に愛されてほしい、という想いで「ポスト嵐」という言葉を意識するファンも、少なからずいるでしょう。
そもそも国民的アイドルグループという定義は、人によりさまざまです。ここでは、個人的な解釈を元に、ポイントを絞る意味で、以下の4点が、国民的アイドルグループと言える条件とします。
1.メンバー全員を、ほぼ毎日、何かしらの形で目にすることができる。
2.老若男女、幅広い多くの人が知っている代表作がある。
3.長期間(10年以上)にわたって、国内のトップセールスを誇る。
4.アイドルの素顔や魅力に触れられるチャンネル(冠番組等)がある。
国民的アイドルグループと呼ばれるためには、セールスも大切ですが、それ以上に、人々がグループに対して思い入れを持つ機会が必要になります。例えばテレビの冠番組などを通して、アイドルの素顔や魅力に触れ、国民の多くがグループに対して思い入れを抱いて初めて、国民的アイドルグループという存在になりうる、と私は考えています。
今、ジャニーズをはじめ、アイドルの世界は供給過多な状況にあります。また、YouTubeなどの動画共有サービスやNetflixなどの動画配信サービスの普及により、視聴者が選択できるチャンネルは、テレビ中心の時代と比較にならないほど増加しました。セールス面で健闘しているグループは多いものの、多チャンネル時代に多くの国民が思い入れを共有できる機会は減ってきています。その意味で今は、国民的アイドルグループが生まれにくい状況にあります。
「ポスト嵐」を担うグループとして、King & Princeを挙げる声は多いと、私は感じています。実際、トップクラスのスキルとセールス、際立つ個性、デビュー曲「シンデレラガール」をはじめとした印象的な作品の数々は、国民的アイドルグループに最も近いグループの一つ、と呼ぶのに十分な内容です。一方で、国内の従来型マーケットを中心に活躍するグループにとって、国民的アイドルグループとなりうる機会は徐々に減ってきており、今後に向けた戦略における課題の一つであると言えるでしょう。