和楽器バンド、暗い時代を切り開く姿 素晴らしい一年の幕開け飾った『大新年会2021』

和楽器バンド『大新年会2021』レポート

 そしてここで、デビュー8周年になぞらえ “八奏新報”と題した8大ニュースの第1弾が発表され、4月放送のTVアニメ『MARS RED』のオープニングテーマを和楽器バンドが手掛けることが明らかになった。会場中が大きな拍手とマスクの下の笑顔で祝福する中、そのテーマ曲であり彼らの新曲でもある「生命のアリア」を撮影OKで初披露。切ないメロディと力強い歌声、そして全ての楽器の音が引き立つ美しいバラードで観客たちを圧倒した。続く「月下美人」では、天井から光がいくつも鈴華の上に降り注ぎ、それに導かれるように鈴華の立つステージのみが高く上がっていく。まるで生き物のように動きながら輪を描く光と、その中心で堂々たる歌声を披露する鈴華という、この世のものとは思えぬ幻想的な光景に、会場中が酔いしれた。

写真=KEIKO TANABE

 後半戦は、バラエティに富んだ魅せ方で和楽器バンドの楽曲と各メンバーのプレイを大いに楽しめるセッションパートからスタート。まずは、哀愁を感じさせる切ないバラード「Episode.0」で町屋がアコースティックギターとボーカル、亜沙がコーラスを披露し、そこに黒流の繊細な和太鼓の音が彩りを添える。蜷川、いぶくろ、神永、黒流、鈴華による「Wagakki & EDM Session -春の海 Remix-」では、お正月ムード満点のわびさびのメロディに重低音と電子音がミックスされ、さらに鈴華が剣舞を披露するという斬新なステージを魅せた。「スペシャルメドレー2021」と題したこの日限りのメドレーパートでは、「チルドレンレコード」「World domination」「花一匁」「Ignite」「月・影・舞・華」「虹色蝶々」など、和楽器バンドらしさを詰め込んだ楽曲たちで、休む暇もなく観客たちを夢中にさせた。

写真=上溝恭⾹ / Kyoka Uemizo

 そして恒例の「ドラム和太鼓バトル~登攀猛打~」がスタートするが、なんと今回の対決場所は天井ギリギリまで高くそびえたつ大きな柱の頂上。昨年末に放送された『SASUKE 2020』(TBS系)に出場した山葵は柱の側面を軽々と登り会場を大いに沸かせ、高い所が苦手らしい黒流は嫌々ながらもフライングで強制的に頂上へ。観客たちは、声の代わりに入場時に配られたハリセンでリズムを鳴らし、彼らのバトルを盛り上げた。そんな楽しいやり取りの後は、幸福感溢れる「あっぱれが正義。」で会場は新年会らしいお目出度ムード全開に。ここで、鈴華がライブタイトルである“アマノイワト”について、「(伝説の中で)重い扉が開かれたように、私たちの想いが、今の時代を切り開けるようにと名づけました」と、和楽器バンドを代表して語る。そして、キラキラと天井から雪が舞い落ちる演出で世界観へ没入させた「細雪」、まるで武道館が無限に広がっていくような壮大なスケールを感じさせる「IZANA」で本編は幕を下ろした。

写真=KEIKO TANABE

 手拍子によるアンコールに応えて再び登場した彼らは、ファンから事前に募集した歌唱動画をスクリーンに映し、会場へ足を運べなかったファンとも心を一つにして「暁ノ糸」を披露。本編を終えても彼らのパフォーマンスの熱量は全く衰えることはない。そして、この日のラストはコロナ禍で制作したという「Singin' for...」。コーラスに合わせて拳を突き上げ、ペンライトを力強く振る観客たちの想いは、ステージで輝く8人に間違いなく伝わっていただろう。「みんな大好き! ありがとう!」と叫んだ晴れやかな鈴華の笑顔で、和楽器バンドによる大新年会は幕を下ろした。

 日本から世界へ向けて、唯一無二のエンターテインメントを発信し続ける和楽器バンド。素晴らしい一年の幕開けを自らの手で掴み取った彼らなら、きっとこの時代を切り開いてくれるはずだ。

(メイン写真=KEIKO TANABE)

■南 明歩
ヴィジュアル系を聴いて育った平成生まれのライター。埼玉県出身。

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