和楽器バンドが世界に発信する、“東京”の現在と未来 コロナ下に生まれた新作『TOKYO SINGING』インタビュー

和楽器バンドが世界に発信する、“東京”の現在と未来 コロナ下に生まれた新作『TOKYO SINGING』インタビュー

 和楽器バンドが、前作『オトノエ』からおよそ2年半ぶりとなるオリジナルアルバム『TOKYO SINGING』をリリースする。

和楽器バンド * WAGAKKIBAND / NEW ALBUM『TOKYO SINGING』 Digest

 ユニバーサルに移籍し1st EP『REACT』を経て完成した本作は、タイトル通り「from Tokyo to overseas」をテーマに制作されたアルバム。津軽三味線や和太鼓、尺八、箏など和楽器奏者を含む総勢8名のアンサンブルはより研ぎ澄まされ、詩吟をルーツに持つ鈴華ゆう子のエモーショナルかつ透明感あふれる歌声をドラマティックに盛り立てる。ここ近年の作品は、音数を削ぎ落としたシンプルなサウンドスケープを目指していた和楽器バンドだが、本作はその路線を引き継ぎつつも、よりヘヴィかつハードな方向へとシフトしているのが印象的だ。バンドのメインコンポーザーの一人であり、プロデュースも手がける町屋は以前のインタビューで、「自分たちこそ日本発のミクスチャーバンド」と話していたが、本作はそんな彼らの一つの到達点といえよう。

 新型コロナウイルスのパンデミックの中、試行錯誤を繰り返しながら制作されたという本作について、鈴華ゆう子(ボーカル)、山葵(ドラムス)、そして町屋(ギター&ボーカル)の3人にざっくばらんに語り合ってもらった。(黒田隆憲)

聴く人たちに何かしらメッセージを届けたいという思いが高まっていた(町屋)

左から町屋、鈴華ゆう子、山葵
左から町屋、鈴華ゆう子、山葵

ーー今回の楽曲制作は、コロナ禍に入ってから行われたものだったのですか?

町屋:前作『REACT』にも収録されている「Ignite」以外の楽曲の大まかな流れは、自粛期間中に楽曲制作を行なって、緊急事態宣言が明けてから一気にレコーディングしていったという感じです。その間、選曲会議などはリモートで行っていました。「Sakura Rising with Amy Lee of EVANESCENCE」はEvanescenceのエイミー・リーとのコラボ曲ですが、これは2月にエイミーが来日してライブでも共演させてもらい、その前後でプリプロを行なっています。なので、この曲だけ制作期間が長かったですね。

ーー『REACT』のときは、「Challenge」「New Beginning」「Farewell to the past」「Special Thanks」という4つのキーワードを掲げ、衣装やアートワークもユニバーサル側のアイデアを積極的に受け入れるなど、これまでにない展開をしていました。

鈴華:今回は、メンバーとリモートで打ち合わせをしている中で、アルバムタイトル『TOKYO SINGING』がまず決まりました。その上で楽曲を持ち寄る流れだったのですが、その段階で60曲くらい集まったんです。その中からアレンジしてもらう楽曲をどれにするかをメンバー内で話し合い、絞り込んだものを提出するという幾つかの段階を経て完成しました。

 これまでの和楽器バンドは、先にタイアップ曲があって、それをアルバムに入れることが必須ということが多かったんですけど、今回はアルバムのテーマを先に決めてから楽曲を作るという、『オトノエ』辺りから徐々にシフトしてきた方向性が定まった感じでもありましたね。

ーー楽曲を聴くと、今回は特に歌詞の部分ではコロナ禍の影響が色濃く感じられます。

町屋:そうですね。メンバーそれぞれが自分自身と向き合う時間もありましたし、この情勢の中で聴く人たちに何かしらメッセージを届けたいという思いが高まっていたと思うので、そういった内容の楽曲が非常に多いです。

鈴華:とにかく、リモートでの打ち合わせは会話が進まなくて。なぜならバンドメンバーが8人、制作スタッフも加わっているから、その中で誰が何を発信しているのか、把握するのが、リーダーとしては本当に大変でした。みんなの言いたいこと、感じていることをPC越しに汲み取るという(笑)。それでもミーティングを重ねていくうちに、少しずつコミュニケーションがしやすくなっていくのは興味深い体験でした。いずれにしてもコミュニケーションにおいて、「空気」や「ニュアンス」がいかに大切かを思い知らされましたね。

町屋
町屋

ーーサウンド面でのテーマやコンセプトはありましたか?

町屋:ここ最近の和楽器バンドは音数を減らし、よりシンプルにして各々のパートが聴こえやすくすることを心がけてきましたが、今作では、これまでのノウハウを用いつつも1st(『ボカロ三昧』)や2nd(『八奏絵巻』)の時のような、割とヘヴィなアンサンブルをやってみたらどうなるか? というテーマがありました。ハードでヘヴィなナンバーが多いのはそれが大きいですね。ギターも前作よりはるかに重ねていますし。

鈴華:ボーカル目線でいうと、ヘヴィなオケの場合は繊細な歌のニュアンスを出しても消えてしまう場合が多いので、あえて初期の頃は『ボカロ三昧』のような、バンドサウンドに負けないようなボーカルを入れるアルバムを作ってきていたんです。要するに「ライブバンド」としての色を前面に出したサウンドプロダクションを行なってきたのですが、コロナ禍になって今後いつライブが出来るか見通しが立たない中、音源としてのクオリティをもっと追求すべきだと思ったんですよね。例えば「日輪」も、ちょっとオケに埋もれてしまいそうなキーなのですが、そこはあえて挑戦していこうじゃないかと。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる