佐藤千亜妃、カバーライブで聴かせた高揚感と温かさ 往年の名曲から近年のヒットソングまで、幅広く歌い上げるステージに

佐藤千亜妃、カバーライブの高揚感と温かさ

 佐藤千亜妃のソロカバーライブ『VOICE4~far and near〜』が11月14日、15日の2デイズにわたって開催。両日ともに2部制を敷き、今回は唯一「有観客+配信ライブ」のスタイルをとった15日の19時半〜の公演模様をお伝えしたい。そもそもこのカバーライブ1回目が行われたのは、今から4年前に遡る。当時はきのこ帝国(2019年5月に活動休止)と並行して、彼女のルーツ音楽や愛してやまない曲たちを披露する“アナザーサイド”的な位置付けだった。とはいえ、1回目からカバー曲というフィルターを通し、また違う角度から聴こえてくる彼女の歌の魅力に骨抜きにされ、今や恒例企画としてファンの間では認知されている。

 現在、佐藤はソロとして活動しており、昨年11月には1stアルバム『PLANET』を発表。そこでも自身の可能性を貪欲に追求する多彩な曲調が揃っていた。彼女の音楽的なバッググラウンドは縦軸も深ければ、最新の楽曲までチェックする目配りの広さもあり、ライブではそれをまざまざと魅せつけられる形となった。

 ステージ上にサポートメンバーの藤田顕(Gt)、種子田健(Ba)、宗本康兵(Key)、BOBO(Dr)がスタンバイし、黒の衣装で身を固めた佐藤が最後に登場。鮮烈なピアノの音色とともに始まったのは、Official髭男dismの「Pretender」だ。丁寧に語りかけるように歌い上げ、1曲目から繊細な声色にグッと惹きつけられた。

 「こんばんは、始まりました。目の前にお客さんがいて拍手も頂けることが久々なので感無量です」と目の前の観客に向けて、歌が披露できることの喜びを噛みしめる言葉にこちらの気持ちも温かくなる。次はSUPER BUTTER DOGの「コミュニケーション・ブレイクダンス」に突入。ダンサブルな曲調にテンションはグッと上がり、佐藤はハンドクラップを交え、キーの高い歌声を存分に発揮。また後半にはドラム~ベース~ギターと個々のソロも織り込んだりと、ロック色の強い楽曲に高揚感を刺激されるばかりだ。そのアッパーな雰囲気から落差激しい選曲をぶつけてくるのもソロカバーの醍醐味なのかもしれない。ここで椎名林檎の「闇に降る雨」が飛び出すのだから。2ndアルバム『勝訴ストリップ』収録曲で、思わず小躍りしたくなる選曲だった。情念渦巻くダークな曲調を、佐藤は柔らかなタッチで歌い上げ、思わず聴き入ってしまう。

 そして、松田聖子の「SWEET MEMORIES」へ。一気に80年代へタイムスリップする振れ幅に驚かされた。甘いシンセの音色に導かれ、時に目を閉じ、時に天井を見つめながら、佐藤は囁くような繊細な歌心で感情移入していく。古き良き歌謡曲も彼女の歌声に違和感なくマッチしていた。その大人びたムードをキリンジ「エイリアンズ」で受け継ぐ流れも良かった。

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