MIYAVI、アコースティックアレンジで示したもうひとつの『Holy Nights』　“音楽を止めない想い”が生み出す柔らかな音

　「Bang! (Lockdown 2020 ver.)」は、端的に言って本作中、オリジナル版と最も異なる印象を受けた楽曲だ。オリジナル版の「Bang!」といえば、『Holy Nights』屈指のアッパーチューン。MIYAVIの掻き鳴らす疾走系ギターリフに加え、アップテンポで力強いビート、そして彼の代名詞である超絶ギターテクニックによる艶やかなギターソロなど、MIYAVIらしさを感じる1曲になっていた。しかし、“Lockdown 2020 ver.”は、牧歌的とも言える柔らかなアルペジオに乗せたバラード曲になっている。とはいえ、サウンド自体が落ち着いたことで侘しさを感じるようになったわけではなく、〈Breaking up the silence〉〈何もかも 超えて〉〈僕らだけが 見える未来〉というようなポジティブな言葉たちも、不思議とスッと心の内に入ってくる。楽曲自体の別の可能性がアコースティックアレンジによって示されたように感じた。

　コロナ禍中に発表された『Holy Nights』では、MIYAVIはコロナ禍以降に起こる“争い”を踏まえて、「こういった状況で自分たちは何を歌うべきなのか？」「音楽を通じて何を発信するべきなのか？」を自ら問いかけ、その答えとして「どんな状況でも音楽を止めない」という姿勢を示した。それが形となって現れたのが、一連の“MIYAVI Virtual”プロジェクトだ。そんなMIYAVIがいよいよ、バーチャルでファンと共有してきた想いをリアルで共有するために、『Holy Nights (Lockdown 2020)』を引っ提げたアコースティックライブ『MIYAVI Acoustic at Billboard LIVE 2020』を東京・大阪で行う。

　コロナ禍はまだ収束が見えない状況ではあるが、『Holy Nights』がリリースされた頃とは異なり、現在は緊急事態宣言も解除された結果、ライブハウスも国や自治体が定めたガイドラインに沿いながら感染防止を徹底する形で営業を再開している。バーチャルを通じてこれまでウィズ・コロナ時代のミュージシャンの姿を示してきたMIYAVI。久しぶりとなるリアルなライブの現場では、きっとその経験をアコースティックライブというフォーマットを活用しながら、『Holy Nights』と『Holy Nights (Lockdown 2020)』で表現した「こういった状況で自分たちは何を歌うべきなのか？」という問いに対する答えを生身のファンに示してくれるはずだ。

■Jun Fukunaga
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター。DJと音楽制作も少々。
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