SHE'S、KEYTALK、マカロニえんぴつ、Creepy Nuts…音楽愛とともに作り上げられた『SWEET LOVE SHARE』レポ

 夏の風物詩である夏フェスも、今年はコロナ禍の影響により、オンライン上での開催が大半となっている。『FUJI ROCK FESTIVAL(以下、フジロック)』や『RISING SUN ROCK FESTIVAL』はYouTubeでの配信で過去のライブ映像を配信した。特に『フジロック』は配信中の3日間、毎晩SNSで話題となっていたことも記憶に新しい。一方、『VIVA LA ROCK』はオンラインフェス『ビバラ!オンライン』として開催。各ミュージシャンのパフォーマンスを生配信し、感染防止も含めて成功を収めた。

 オンラインフェスのこれまでの傾向を見ていると、『フジロック』などに代表される「アーカイブ型」と『ビバラ!オンライン』に代表される「無観客ライブ型」に大きく分けられる。そんな中で『SWEET LOVE SHOWER』のオンラインフェス、『SWEET LOVE SHARE』が8月29、30日に開催された。本稿では、この2日間の一部アクトの模様についてレポートする。

【同イベントのテクノロジー面に関する記事はこちら】

 今回の『SWEET LOVE SHARE』は、3つのチャンネルで同時生配信された。バンドアクト中心の「Mt.FUJI ch.」。アコースティックのアクトが中心の「WATER FRONT ch.」。そしてスタジオでのトークライブや『SWEET LOVE SHOWER』の過去映像を配信する「SPACE SHOWER TV STUDIO ch.」。3つのチャンネルを行き来できる、新しい形のオンラインフェスとなっていた。

 無料配信となった初日、Mt.FUJI ch.のトップバッターを飾ったのはズーカラデル。「ズーカラデル、始めますー!」とエネルギッシュな挨拶からスタートした。3人のバンドアンサンブルがエモーショナルな響きを生み出し、オーディエンスの心に寄り添う丁寧な演奏。飾らない彼らの言葉が、シンプルで気持ちの良いメロディに乗って切実に迫ってくる。ミニマムで等身大な柔らかいロックンロールが、2020年の夏だからこそ切実さを持って鳴った、心に残るアクトだった。

ズーカラデル(撮影=AZUSA TAKADA)
ズーカラデル(撮影=AZUSA TAKADA)

 Mt.FUJI ch.2組目のアクトはSHE'S。煌びやかなSEと共にメンバーがステージに立つと始まった1曲目は「Masquerade」。異国情緒漂うサウンドに井上竜馬(Vo / Key)の色気たっぷりのボーカルが絡み合う。美しいキーボードのメロディからダイナミックなロックサウンドへと激しく変化する「Unforgive」。そしてエレクトロ調のサウンドが印象的な「Blowing in the Wind」とSHE'Sの音楽性の幅広さを象徴するナンバーが演奏されると、最後はアップテンポなダンスナンバー「Dance With Me」へ。夏にピッタリの蒼々としたサウンドの裏に、オンラインだろうと自身の音楽を届けようとするSHE'Sの情熱を感じる演奏だった。

SHE'S(撮影=AZUSA TAKADA)
SHE'S(撮影=AZUSA TAKADA)

 初日のトリを飾ったのはKEYTALK。ステージに上がる瞬間から全力投球の彼らは「MATSURI BAYASHI」「Summer Venus」とサマーチューンを連続でドロップ。夏フェスも甲子園も花火大会も無くなったこの夏の終わりに彼らが音楽で夏を届けようと、夏バンド・KEYTALKの本領が発揮されたライブだった。最後はキラーチューン「MONSTER DANCE」。見ているオーディエンスを踊らせ、狂騒の渦へ巻きこむようなKEYTALKの演奏がバッチリキマり、『SWEET LOVE SHARE』初日は幕を下ろした。

KEYTALK(撮影=AZUSA TAKADA)
KEYTALK(撮影=AZUSA TAKADA)

 「マカロニえんぴつでーす」とボーカル・はっとりのユルい挨拶から始まった2日目、Mt FUJI ch.トップバッターのマカロニえんぴつ。彼らのソリッドでポップな演奏は、バンドメンバーの演奏の巧みさと丁寧に音を鳴らそうという心意気を感じる。「止まない雨は無い」とはっとりが語り、最後に演奏したのは「ミスター・ブルースカイ」。思わず心を揺さぶられるはっとりの絶唱だった。

マカロニえんぴつ(撮影=西槇太一)
マカロニえんぴつ(撮影=西槇太一)

 1曲目から「ヘルレイザー」のキレキレのフロウで始まったCreepy Nuts。「よふかしのうた」での『DMC』世界大会で優勝したDJであるDJ松永の圧倒的なターンテーブリズムに最早スターの風格すら漂うが、その後のMCでマイクをカメラのレンズに当ててしまったことをスタッフに詫びるR-指定の姿は「Creepyらしさ」にあふれていた。「僅かでも希望を持っていきましょう」と語り始まったのは「かつて天才だった俺たちへ」。その圧倒的なステージングは、オーディエンスに希望を届ける覚悟に溢れていた。

 2日目のMt FUJI ch.、3番手はBLUE ENCOUNT。彼ららしいロックパーティチューン「ワナビィ」では「いまに見てろよコロナウイルス」という替え歌も飛び出す。MCで『ラブシャ』への思いを語る田邊駿一(Vo / Gt)の目には涙が。そんな彼自身の『ラブシャ』への愛や、世界への思いが爆発した「もっと光を」。そのエモーショナルな演奏はどこまでもBLUE ENCOUNTらしく、こちらまで涙してしまいそうになる。最後はこれからも歌い続ける覚悟を全身全霊で届けた「アンコール」。たとえ眼前に観客がいなくとも、いつだって彼らは全力だ。

BLUE ENCOUNT(撮影=岸田哲平)
BLUE ENCOUNT(撮影=岸田哲平)

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる