『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHARE supported by au 5G LIVE』に見た、テクノロジーによって引き寄せられるリアルライブの姿とその未来

『ラブシェ』に見たリアルライブの未来

 8月29日・30日に、ライブイベント『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHARE supported by au 5G LIVE』が開催された。同イベントは新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、山梨・山中湖交流プラザ きららで開催予定だった野外ライブイベント『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2020 -25th ANNIVERSARY-』が中止になったことを受けて、オンライン・ライブイベントして企画されたものだ。

【同イベントの各アーティストによるライブに関する記事はこちら】

 そのライブ配信で大きな役割を担ったのは、au 5Gと先端テクノロジーを活用したKDDIの「リモート・ARライブ配信システム」と「ライブ配信用マルチビューアー」。

 「リモート・ARライブ配信システム」においては、『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER』の世界観をオンライン上で表現するために「Mt. FUJI ch.」ではLEDライト、「WATER FRONT ch」では”WATER FRONT ch”看板と、ライトがリアルの照明、電飾と馴染む形でAR化。現実のレイヤーにARのレイヤーが加えられることで、屋内ステージでありながらも、実際に野外で行われてきたイベントのように奥行き、天高を感じさせるものになっていたと同時に、現実のステージ装飾を拡張する効果が見られた。

 一口にライブのAR演出といっても、現実世界にないものをあえて誇張することでわかりやすく示し、アーティストのポテンシャルを引き上げるものと、ライブ制作自体を合理的にしていくものという、大きく2つのアプローチに分けて考えることができる。今回の演出は後者にあたり、どこまでがAR演出かわからないものだったことが特徴だ。

 そのため、これだけのリアリティを伴うのであれば、デジタルでステージ装飾を作ったほうがコスト面の負担を減らすことができるというメリットも生まれ、今回の場合は、結果的にARによって、演出が低コストで増やせたため、映像自体のポテンシャルも引き上げられることにつながったという。

 こういったライブ制作自体の合理化を目的にしたアプローチが行われる理由は、配信ライブがアーティストにとって、コスト面で足枷になっていることや、配信ライブの主人公はアーティストだが、会場となるライブハウスも独自性を産まなければならないという課題を抱えていることにある。しかし、KDDIでは、そのソリューションとして、デジタルテクノロジーの導入を提案しており、例えば小規模なライブハウス、アマチュアアーティストでもARライブができるようになれば、このシステムがインフラとして業界の下地を支えるだけなく、ひいてはテクノロジーによって、業界全体が恩恵を受けることを意味するはずだ。

 また、今回の場合は、コロナ禍によってオンラインに移行せざるを得なかった『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER』の世界観をリアルイベントに近づけるという目的でもこのシステムが使用されている。

 配信ライブは、映像を作りこむことでアーティストのライブ自体のポテンシャルを上げることができるが、その場合は1曲ずつ刻んで、チェックを入れる必要があるなど、アーティストのテンション的にライブとしての熱量を損なう恐れもある。しかし、AR演出はカメラの動きにあわせて重ねていくというように基本的には生で使うテクノロジーであるため、ライブの熱量を伝えることにも長けており、先述のようにリアルタイムで配信される映像自体のポテンシャルも引き上げられるというメリットがある。

 加えて、「リモート・ARライブ配信システム」は、遠隔操作可能な4K60p撮影対応のPTZカメラが使用されていることで、現場スタッフやアーティストの安全に配慮した環境が構築されることが特徴になっている。複数人が集まるライブ会場もリモートでカメラを操作することで、密集を避けつつ、感染リスクを下げることができる。それがコロナ禍のライブエンタメの現場で強みを発揮する形になっている。

PTZカメラ
PTZカメラ

 一方、「ライブ配信用マルチビューアー」も、従来の『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER』の世界観をオンラインで伝えることを目的にした機能だ。この機能では、複数のステージが設けられた実際のイベントで、各ステージを行き来する感覚を再現するために今回、3つのチャンネルが設置された。

 各チャンネルでステージ装飾や演出が異なることも実際のリアルイベントでステージを行き来する感覚に合わせてのものだ。そういったステージの見た目が変わることをひとつの画面で完結させるためにもこのマルチチャンネルは有効だが、その発想は、いかに実際のフェス感をオンラインの中で再現するか、というテーマに由来している。

 こういったテクノロジーを活かしたバーチャルライブは、今後5Gの普及によって、どのように進化していくのだろうか?  例えば5Gの大容量通信、低遅延、多接続という特性によって、より高画質なAR演出映像を同時に素早く多くの人々に届けたり、届けられたりということが見られるようになるはずだ。



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