the peggiesが描く“大人になりきる直前の不確定な揺らぎ” アニメ『彼女、お借りします』など物語との親和性を探る

the peggiesとアニメ主題歌の親和性

 the peggiesは過去にも多数のアニメとのタイアップをこなしている。たとえば、『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(2018年、メ~テレ)のオープニングテーマとなった「君のせい」も、青春のキラキラがストレートに表現されている。不安定な精神状態によって不可思議な現象が起こる「思春期症候群」。それが原因で発生する事件を主軸にしながら、登場人物たちの思春期ならでは不安定で繊細な心模様を描き出すストーリー。「君のせい」は、変わり者の主人公と強がりな先輩の恋にフォーカスした内容になっていて、繰り返される〈君のせい〉というフレーズが幾重にも色合いを変えていく、ポップで強気な恋愛ソングだ。

 一方で、『さらざんまい』(2019年、フジテレビ系)のエンディングテーマとなった「スタンドバイミー」は、思春期の危うさ、切実さのほうにスポットが当たる。『輪るピングドラム』などを手がけた幾原邦彦監督が手がけた『さらざんまい』は、「つながり」をテーマとした作品で、幾原監督らしい意味深でトリッキーな物語が展開されていく。それぞれに複雑な内面を抱えた男子高校生3人が主人公で、話が進むほどに切なさとやるせなさが募る。エンディングを彩る「スタンドバイミー」は、触れたら割れてしまいそうな危うさを研ぎ澄ましたような歌詞と、それを引き絞るように北澤の歌いあげるボーカルで、物語の余韻にじっくり浸らせてくれるような曲になっている。

 the peggiesの楽曲には、大人になりきる直前の不確定な揺らぎが宿っているように思う。年を重ねて擦れていってしまえば、簡単に受け流してしまうようなことに振り回され、傷つく繊細さ。だからこそ、喜びも苦しみもしっかりと受け止める感受性の豊かさ。大人になるまでに誰もが経験し、けれど大人になると忘れてしまう。人生のなかの、ほんの刹那のみずみずしさを、飾らない言葉、飾らない音で表現してみせるthe peggiesは、“青春”というコンテンツと抜群に相性がいい。彼女らの音楽を聴けば、いま青春のまっただなかにいる人にはきっと痛いほどまっすぐに刺さるのだろうし、かつて青春を過ごした人には鮮明に記憶がよみがえるだろう。

 物語と組み合わさることでより魅力を増すthe peggiesの音楽は、これから先もまた、新たなきらめきを切り取って見せてくれるだろう。

■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。
Twitter(@erio0129

the peggies『センチメートル』

「センチメートル」特設サイト
the peggies「センチメートル」配信はこちら

■リリース情報
<通常盤>CDのみ
価格:¥1,320(税込)
収録曲:
1.センチメートル
2.花火
3.君のせい(Live Ver.)

<期間生産限定盤>(アニメ盤)
宮島礼吏先生描き下ろしトールサイズデジパック仕様
CD+DVD
価格:¥1,870(税込)
CD:
1.センチメートル
2.花火
3.君のせい(Live Ver.)
4.センチメートル Anime Ver.

DVD
TVアニメ『彼女、お借りします』
ノンクレジットオープニング映像

オフィシャルサイト
公式Twitter
公式Instagram
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公式LINE:『the peggies』で検索。

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