平手友梨奈、楽曲の世界を生きる主人公としてのパフォーマンス 森山直太朗との共演を前にソロ活動を振り返る

欅坂46『黒い羊 (TYPE-A)』

 まだ平手友梨奈のパフォーマンスを目にする前、メディアや周囲の人がこぞって平手友梨奈を「天才」「絶対的センター」と褒めそやすのを、一歩引いた目で見ていた。数十人のグループの中でセンターにいるから、相対的に目を引きやすいのだろうと。一人の人間にそこまで大きな力があるわけがないと思っていたのだ。しかし、初めてきちんと欅坂46のMVを見た時、ガンと頭を殴られた気持ちになった。この存在はなんなんだろう、と目を凝らした。常にセンターに配置され、振りも一人だけ違う。映像に映る時間も圧倒的に長い。でもそれだけじゃない。

 パフォーマンス力も、もちろん高い。全身のバネを余すことなく使った動き、その迫力を最大限発揮する長い手足。だが、それだけでもない。平手友梨奈の持つこのまなざし、この表情はなんだろう。「不協和音」の中で叫ばれる〈僕は嫌だ〉、これは一体誰の言葉なのだろう。

 アイドルらしからぬ反骨心をむきだしにした「サイレントマジョリティー」で衝撃のデビューをした欅坂46。平手を中心とするパフォーマンスという形式が確固たるものになるにつれ、発表される楽曲の内容も平手自身とリンクしていくような感覚を覚える。今見ているものは、欅坂46というグループが提供するパフォーマンスなのか、平手自身の意思なのか。平手のソロ「角を曲がる」、脱退前最後のシングル曲となった「黒い羊」などは、そういう意味で「欅坂46の平手友梨奈」の到達点とも言えるだろう。

欅坂46 『黒い羊』

 そんなフィクションとノンフィクションがないまぜになるような感覚は、欅坂46以外の場でも引き起こされる。

 『2017 FNS歌謡祭』(フジテレビ系)で平井堅とコラボした平手は、「ノンフィクション」でソロダンスを披露。「ノンフィクション」は、〈何のため生きてますか? 誰のため生きれますか? 僕はあなたに あなたに ただ 会いたいだけ〉とサビで歌い上げる、生きる上での苦難と、それでも生き伸びてほしいという祈りのような曲だ。繰り返される「会いたい」という言葉に全身で呼応するような平手のパフォーマンスは、大きな反響を生んだ。

 他にも、SEKAI NO OWARIの「スターゲイザー」のMVでは、殺伐とした世界で生きる少女として。Mrs. GREEN APPLEの「WanteD! WanteD!」のSide Storyとして作られた新しいMVでは「地球の最後の日」を生きる1人として。もともとその世界の住人であるかのようになじんでいるのに、どの世界にあっても、彼女はゆるぎなく「主人公」だ。私たちはその一挙手一投足に目を奪われ、何かしらの感情を想起させられる。

SEKAI NO OWARI「スターゲイザー」
Mrs. GREEN APPLE- WanteD! WanteD! (Side Story ver.)

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