ドリカム、MWAM……バンドの“核”を再定義したアーティスト 新譜5作からピックアップ

SHE’S『Tragicomedy』(通常盤)

 “ピアノロックバンド”を軸にしながら、エレクトロ、アコースティックなど幅広いテイストを取り入れ、自らの音楽性を発展させているSHE’S。「Letter」(任天堂「あつまれ どうぶつの森 × Nintendo Switch Lite」2020春CM内起用)、「Unforigive」(ドラマ『ホームルーム』OP主題歌)などの話題曲を収めたニューアルバム『Tragicomedy』で彼らは、サウンドのふり幅をさらに解放してみせた。ピアノ、ギター以外はすべて打ち込みで構成された「Blowing in the Wind」、アコギと歌による「Not Enough」などは、このバンドの音楽的な自由度の高さを証明していると思う。“悲喜劇”を意味するアルバムタイトルに込められているのは、“悲劇と喜劇が共存しているのが人間。そのことを認めたうえで進んでいこう”というメッセージ。その根底にあるのは、リスナーの心に寄り添おうとする井上竜馬(Vo&Key)の思いだ。

SHE'S - Letter【Acoustic Session】
Lucky Kilimanjaro『エモめの夏』

 今年3月にメジャー1stアルバム『!magination』をリリース。“世界中の毎日をおどらせる”をテーマに掲げた楽曲とパフォーマンスで確実に支持を広げている6人組バンド・Lucky Kilimanjaroのニューシングル『エモめの夏』は、2020年の夏の空気をナチュラルに掴み取った作品となった。表題曲は近未来的なエレクトロサウンド、有機的な生楽器の音色を結び付けながら、〈自信も未来も置いといて 今はこの炎で踊るよ〉というフレーズに辿り着くポップナンバー。曲名も秀逸だが、心と身体を気持ちよく揺らしてくれる極めて優れた夏ソングだと思う。カップリング曲の「新しい夏を駆けて」は4つ打ちのビートを軸にしたダンスチューン。90年代のエレクトロを思い起こさせるトラックと〈ひと夏のダンス/駆けて 駆けて 駆けて〉が生み出す化学反応を楽しんでほしい。

※初出時、表記の一部に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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