『さよなら絶望先生』シリーズ、キャラと楽曲の数だけある魅力 サブスク解禁を機に色褪せない各曲を紹介
6月17日にアニメ『かくしごと』×大槻ケンヂのコラボシングル『愛がゆえゆえ/あれから(絶望少女達2020)』がリリース。シングルには大槻ケンヂと絶望少女達による約10年ぶりの新曲「あれから(絶望少女達2020)」が収録された他、リリースに合わせてアニメ『さよなら絶望先生』シリーズの関連楽曲が一斉にサブスク解禁となり、久米田康治作品ファンの間で大きな話題を集めている。作詞家の只野菜摘をはじめ、大槻ケンヂ、特撮、ROLLYなど多彩なクリエイターを巻き込みながら、数多くの名曲を生み出したアニメ『さよなら絶望先生』シリーズの音楽の魅力とは? 本稿では、サブスク解禁された楽曲から「今だからこそ聴いて欲しい曲」を紹介する。
懐かしい人からの手紙を受け取った、むず痒さと高揚感
アニメ『さよなら絶望先生』は、2005年から2012年まで講談社『週刊少年マガジン』で連載された久米田康司による漫画を原作に、2007年7月から2009年9月まで3期にわたってテレビ放送され、OVAも2作制作された人気シリーズ。自殺願望のある高校教師=糸色望が、超個性的な女生徒たちに翻弄されていく物語で、主人公の望を声優・神谷浩史が演じたほか、女生徒役で野中藍、沢城みゆき、井上麻里奈、小林ゆう、後藤邑子、新谷良子、真田アサミ、谷井あすか、松来未祐といった実力派が出演。彼女達がユニット「絶望少女達」として歌った楽曲やキャラクターソングが話題を集め、その人気と楽曲のクオリティーの高さから、日比谷野外大音楽堂などでワンマンライブも開催された。
絶望少女達が10年ぶりに再集結してレコーディングされた「あれから(絶望少女達2020)」は、絶叫とメタルサウンドで激しく始まる『さよなら絶望先生』シリーズらしい1曲。歌詞は、久しぶりに親戚の子と会ったことで時の流れを実感し、自分は成長できているのかと自問自答を繰り返しながら、最終的にはこの10年を肯定してくれるといった内容だ。6分強と少々長めの尺の曲ながら、めくるめくような楽曲展開と、次々と飛び出す絶望少女達の個性溢れる歌声によって、まったく飽きることなく一気に聴くことができる。特に終盤でたたみかける大槻ケンヂと絶望少女達の絶唱は、実に胸を熱くさせる。
また、絶望少女達が歌うパートには〈人として軸がぶれてる て歌でブレブレ踊った〉というフレーズが飛び出すほか、同作のメインヒロインである風浦可符香の存在を彷彿とさせる〈記憶の中で生きてれば〉と歌う場面があるなど、随所に伏線が散りばめられており、『さよなら絶望先生』ファンにはたまらない内容となっている。ちなみに大槻ケンヂとめぐろ川たんていじむしょが歌う「愛がゆえゆえ」も、〈ゆえゆえ〉という言葉の繰り返しが、「人として軸がぶれている」の〈ブレブレブレブレ〉というコーラスのオマージュになっており、大槻の久米田作品への愛が感じられる。
往年の『さよなら絶望先生』ファンは、「あれから(絶望少女達2020)」を聴き、思いがけず届いた、懐かしい人からの手紙を読んだ時のようなむず痒さと、また彼女たちに会えたという高揚感を噛みしめながら、6分強の間にこの10年の月日を走馬灯のように甦らせただろう。