『さよなら絶望先生』シリーズ、キャラと楽曲の数だけある魅力 サブスク解禁を機に色褪せない各曲を紹介
キャラと楽曲の数だけ魅力がある『さよなら絶望先生』シリーズの音楽
アニメ『絶望先生』シリーズが生んだ楽曲は、大槻ケンヂとNARASAKIによるメタル調の楽曲が広く知られているが、実は非常に多彩で、アニメの内容を知らなくても、純粋に音楽だけで楽しめるものばかりだ。
1期『さよなら絶望先生』の10話と11話でOPテーマとして流れた「強引niマイYeah〜」は、軽快なブラスサウンドとグループサウンズを彷彿とさせるエレキギターによる極上のダンスナンバー。メランコリックに展開するBメロと、そこから爽快に広がるサビが秀逸だ。ザ・歌謡曲といったメロディと要素満載の編曲は、まさにアニソンのお手本のよう。そのなかで情感たっぷりに歌う風浦可符香(野中藍)、木津千里(井上麻里奈)、木村カエレ(小林ゆう)、日塔奈美(新谷良子)4人の歌唱力の高さも際立っている。
2期『俗・さよなら絶望先生』の第3話挿入歌「主人公」は、キラキラとしたエレキギターのイントロで始まる、アイドルチックでガーリーな楽曲。作曲・編曲を手がけた川田瑠夏は、前述の「強引niマイYeah〜」など『さよなら絶望先生』シリーズの曲も多数手がけている人物だ。そこはかとなく80年代感が漂うシティポップ調のサウンドが非常に心地よく、日塔奈美(新谷良子)のフワッとした歌声とも見事にマッチしている。
また「fetish」は、アルバム『絶望歌謡大全集』に収録されたテクノ歌謡ナンバー。パーカッシブなリズムをメインにしたファンク/ディスコのサウンドで、今アニクラでかかっても間違いなく盛り上がるだろう1曲だ。大人の愛をテーマにした歌詞はちょっぴりセクシーで、ボーカルを務めた小節あびる(後藤邑子)、藤吉晴美(松来未祐)の歌声も実に聴き応えがある。
そしてアルバム『絶望歌謡大全集2』に収録の藤吉晴美(松来未祐)のキャラクターソング「羽根ペンの魔法」は、怒濤の展開が秀逸な、アイドルチックな萌え/電波ソングで、賑やかなサウンドとマッチしたキュートな歌声の虜になったファンも当時多かっただろう。残念なことに松来未祐は2015年に急逝しており、サブスク解禁されたこの機会に、彼女の歌声の魅力を再確認して欲しい。
『さよなら絶望先生』シリーズの音楽は、昭和レトロ、メタル、テクノ歌謡、ゴシック、和テイストなど個性的な楽曲が満載で、それは劇中に登場する絶望少女達のキャラクターとしての強度の高さゆえだ。ほかにも木津千里(井上麻里奈)が歌う情熱のバラード「薔薇の棺」、『俗・さよなら絶望先生』7話劇中歌で、架空の魔法少女アニメの主題歌である「リリキュアGO!GO!」、木村カエレ(小林ゆう)がひたすら絶叫するデジタルハードコアの「豚のご飯」など、キャラと楽曲の数だけ魅力がある。
■榑林 史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。