大滝詠一「君は天然色」が『かくしごと』の世界と調和する理由は? 高橋李依ら歌うイメージアルバムを聞いて
現在放送中のTVアニメ『かくしごと』(TOKYO MXほか)。“ちょっと下品”な漫画を描いている後藤可久士(CV:神谷浩史)が、最愛の一人娘である小学4年生の後藤姫(CV:高橋李依)に、その職業を“隠し”ながら暮らす様子をコミカルに描いた物語だ。
本稿で取り上げたいのは、あまりにも斬新すぎる同アニメのエンディングテーマ。なんと、今から約40年前に発表された、大滝詠一の代表曲「君は天然色」をそのまま採用しているのだ。さらに、5月27日に発売された『TVアニメ「かくしごと」イメージアルバム feat.君は天然色』にも驚くべき点が。というのも、その収録曲は9曲すべてが「君は天然色」。キャスト各人が“キャラソン”として歌うといっても、アニソン界ですら珍しい型破りな一枚だ。
そもそもアニメ視聴者の年代によっては、「君は天然色」を今回初めて耳にしたという人もいるだろう。前述した大滝は、エコーやリバーブ、楽器のオーバーダビングなどを駆使して、往年のポップス〜歌謡曲の礎を築いた人物であり、彼の主宰レーベルの名を借りて、上記のような音楽は“ナイアガラサウンド”として今なお親しまれている。
今回の『かくしごと』イメージアルバムでも、現代的なサウンドギミックを取り入れつつ、リバーブの掛かったやたらと力強いスネアが刻まれるパートが用意されるなど、ナイアガラサウンドへのリスペクトを大いに感じることができる。また、大滝による原曲と、アニメエンディング映像の親和性の高さも見事である。アニメ本編こそ、夏の季節を舞台にしてはいないものの、蒼色を基調とした空や海のイラスト描写は、リゾート感のあるゴージャスな楽曲トラックとも相性がよい。
それと同時に、開放的ながらも、その終わりには一抹の寂しさが漂う夏の季節は、高橋演じる姫や、彼女がクラスメートたちと結成した“めぐろ川たんていじむしょ”メンバーが抱く刹那的な“少女らしさ”を、最も美しく引き立たせるようでもある。可久士や大人である我々から見た姫たちの姿は、どこまでもひたむきだからこそ、なぜか切なさを感じる瞬間があるように思える。そんなアンビバレントな感情も、同様の性質を持った夏だからこそ自然に結び付けられるのであり、この相反性が「君は天然色」の歌詞にも共通しているのだろう。