広瀬香美、YouTuberとして話題を集める理由は? “広瀬節”炸裂のアレンジと意外な選曲の妙
また、「広瀬香美の○○を歌ってみた」の場合、選曲の意外性も注目を浴びた理由のひとつだろう。これまでにアップされた動画は、前述の米津玄師ら若手アーティストのほか、アニメ『鬼滅の刃』の主題歌として大ヒットしたLiSAの「紅蓮華」や嵐、石川さゆり、お笑い芸人・どぶろっくのネタ「もしかしてだけど」などとにかく幅広いラインナップに驚く。時にはリクエストに応えるかたちでリスナーと積極的にコミュニケーションをとる姿勢も、YouTubeならでは。加えて分析パートと称して、楽曲の成り立ちにまで踏み込んだ丁寧な解説を付け加えるなど、わずか10分足らずの動画の中に多くの見どころを詰め込んでいる。
彼女ほどキャリアのあるミュージシャンなら、「歌ってみた」をしなくとも自身の楽曲をいくらでもコンテンツ化できただろう。それをあえて挑戦したことが思わぬ“バズ”を生んだ。しかも片手間な演奏ではなく、1曲ずつかなり練習を重ねて仕上げてきていることは疑いようもなく、何より音楽へのあふれる愛と原曲へのリスペクトがひしひしと伝わってくる。動画のクオリティも回を追うごとにパワーアップし、コメント欄の活況ぶりを見るに世代を超えたファンを獲得することにも繋がったのではないだろうか(かつて「ニコ動」でブレイクした小林幸子のように)。コロナ禍で生のエンターテインメントと接する機会が奪われた今、私たちに音楽を楽しむことを改めて教えてくれたと言っても過言ではない。ステイホーム期間が終わっても、コンテンツとして続けて欲しいと切に願う。
■渡部あきこ
編集者/フリーライター。映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などカルチャー全般から旅、日本酒、伝統文化まで幅広く執筆。福島県在住。