『15th anniversary DREAM BOY BEST ~2012-2020~』インタビュー
KEN THE 390、<DREAM BOY>の歴史を振り返って思うこと ラッパー/運営の視点から見るHIPHOPシーン
KEN THE 390が『15th anniversary DREAM BOY BEST ~ 2012-2020 ~』の中から選ぶ「〇〇な3曲」をピックアップ。その理由についても聞いた。(編集部)
<ラッパーとして壁にぶつかった3曲>
・「DREAM BOY」
KEN:「DREAM BOY」はフックを歌っているんです。それまではフックで歌ったことがなくて、メジャーの時とかは特に、サビでメロディが欲しかったら、歌える人を呼んで歌ってもらって、僕はラップをしていたんです。この曲で初めて「自分で歌おう」と決めたはいいものの、普段歌っていないからメロディを考えるのも大変だし、レコーディングも大変でした。でも、この曲はBACHLOGICのプロデュースなんですよ。初めてBL君と一緒にやった曲で、だからこの曲ができたというか。フックの部分に対して意見をくれたりセッションみたいな感じで制作を進めて、レコーディング当日も来てくれて「もっとこの感じで歌って」って言ってくれたり。僕は初めてのことで自信がなかったけど、BL君が「これでOK」「このテイクいいね」って言ってくれると、「これでいいんだな」と思えるし、信頼感があるから彼のいう「OK」の説得力も全然違いました。「DREAM BOY」でサビを歌うという選択肢ができたことで、曲の幅がものすごく広がりました。
・「五月雨の君に(feat.鋼田テフロン)」
KEN:これもプロデュースがBL君で、理由も「DREAM BOY」と似ているんですが、この曲ではバースも歌っているんです。メロディックな楽曲で、この曲を作っていた当時はドレイクとかもそうだし、バースがラップとメロの中間みたいなヒップホップが多くて。最初はバースをラップで書いてBL君に渡したら「もっとスムースでメロディックに」って返事が来て。僕が書き直したら、僕の歌詞をBL君がフロウして送ってくれたりして(笑)。そんなやりとりを重ねてできた曲ですが、この曲ができたことで「歌う」という選択肢が増えたり、自分の中でも発見がたくさんあったんです。「DREAM BOY」と「五月雨の君に」でBL君と制作できたおかげで、それまで考えもしなかった扉を一つ開けてもらえた気がしました。
・「夜が来るまで feat.ACE COOL」
KEN:トラップのビートにラップを乗せたのがこの曲が初めてだったので、最初は難しかったです。僕の基本的なスタンスとして、メロディやビートなどもそうですが、ヒップホップの時代感に合わせて新しいことにどんどん挑戦していきたいんですよね。「夜が来るまで」はちょうどトラップビートがオントレンドになっていた時だったんですが、今の時代で、ヒップホップだけじゃなく音楽としてトラップを無視するというのも時代感的に合わないし、だけど無機質でどよんとしたラップは自分っぽくないなと思ったので、自分なりにどうアプローチできるかかなりトラックやリリックのテーマ設定も含めて試行錯誤しました。
<我ながら「これぞパンチラインだ!」と思うフレーズ3選>
・〈2階建ての家を買おう〉(「2階建ての家を買おう」)
KEN:ラッパーのいわゆるお金ソングって、ラッパーの実力を見せるものさしみたいなもので、自慢というよりはどう自慢するかをみんな楽しんでいるんです。でも、自分がそれを歌うときに、車やネックレス、お金が欲しいと言うのは「自分のリアルではないな」と思って、一番自分の中でリアルに高い買い物といったら「絶対家だ」と。じゃあ、家を買うという歌を作ったら面白いんじゃないかなって。みんなが高級車の話をしていても、「いや俺の買い物の方が高いから!」って(笑)。
・〈無重力でも恋に落ちるほど〉(「無重力ガール」)
KEN:このフレーズを思いついた時に「めちゃくちゃうまい事言うな、俺」と思いました(笑)。普段も使いたいフレーズは常に探しているんですが、たとえば「魚なのに君に溺れてしまう」とか、ラブソングでうまい言い回しをするのは特に面白いなと思います。この曲は、書いているときに「宇宙ネタで全部いける!」と思って、比喩表現も使いつつラブソングとしても成り立っているので、パンチラインというよりは、全体のリリックとしてよく書けた曲だと思います。
・〈この世界に一つだけの花でも水をあげなけりゃそのうち枯れてしまう〉(「Nobudy Else(feat.ACE COOL & Moment Joon)」)
KEN:自分の書く歌詞は、ストイックソングが多いなと改めて思いました。この曲もそうで、オリジナリティはもちろん大事だけど、磨かないと結局どんなオリジナルも廃っていくということを言いたくて。花も水をあげなければ枯れてしまうし。〈世界に一つだけの花〉というみんなが知っているフレーズを使いつつ、自分が思っていることをきちんと入れられたので満足感が高かったです。別の曲のフレーズを使って歌うって、ポップスソングじゃなかなかできないし、それができるのもヒップホップやラップの面白さですね。
<「これは胸熱だった」と思うコラボ>
・「Shock feat. SKY-HI, KREVA & Mummy-D」
KEN:どの曲ももちろん胸熱ではあるんですけど、「Shock」はSKY-HI、Mummy-Dさん、KREVAさんによく声をかけたな、と(笑)。今の僕だったら多分怖くてできないし、僕以外皆さんメジャーのアーティストで、僕だけインディーでしかもそれを僕のレーベルから出すというのも、勢いがあったからこそできたことだと思います。参加してもらえたことへの感謝もあるし、ヒップホップヘッズが理想的だと思うようなコラボを実現できたこともすごいし、ライブを披露した時のことを今振り返っても胸熱ですね。
元々はクレさん(KREVA)のスタジオでビートを聴いて、めちゃくちゃかっこよかったので、ソロでやらせてもらおうと思っていたんです。だけど途中から「この曲でマイクリレーがしたい」と思って、もう一回クレさんに電話で相談して思い浮かんでいるメンツを伝えたら、驚きながらも半分笑って「みんなが良ければいいよ」って言ってくれて。他の二人にも速攻連絡して快諾してもらいました。恵比寿LIQUIDROOMでライブをした時も、ライブがスタートして幕が開けたら4人が並んで立っていて、お客さんから見てもその時のインパクトはすごかったと思います。
・「インファイト feat. ERONE, FORK(ICE BAHN), 裂固 & Mr.Q」
KEN:「インファイト」は“infight=(接近戦)”と“韻ファイト”のダブルミーニングとして両立できるというアイデアが最初にあったので、韻が硬い人を呼ばなければと思い、韻踏合組合のERONE君とICE BAHNのFORKさん、ラッパ我リヤのMr.Qさんという日本のハードライマーたちに集まってもらいました。あとは若手も入れたくて、裂固に参加してもらいました。東西のベテランから若手までが揃ったここまで韻の固いグループって他にないし、なかなか昔の自分では想像できないようなメンツでしたね。テーマとマッチしたみんなに集まってもらえて本当に良かったです。
・「Make Some Noise feat. ZORN & NORIKIYO」
KEN:これはNORIKIYO、ZORNに参加してもらった曲で、マイクリレーなんだけどリリックのメッセージ性も強いんですよね。元々はNORIKIYOと先に二人で作り始めていたのですが、あと一人誰かにマイクを回したいと考えたときに、ZORNがドンピシャだと思いました。これまでの自分のマイクリレーの中でも、他の曲とは少し色が違う曲になっていると思います。単純にMC同士の腕くらべというよりは、スタイルとメッセージ性を固めていて、そういう楽曲をこの3人で作れたのは嬉しかったですね。
こう見ると、コラボ相手の幅広さはやっぱり自主イベント(『超・ライブへの道』)を開催してきたことが大きいと思います。最初の頃は、マイクリレーの曲を出すことがゴールではなくて、そのメンツでイベントを開催して、それぞれがライブを披露した上で最後にみんなが集まってコラボ曲を演奏するというところまでをパッケージとして考えていました。なので、ライブに誘って来てくれなさそうな人には声をかけないでいたし、イベントでお客さんにライブをみてもらってその曲が完結する。それをずっと考えていたから自然に(参加アーティストの)幅が広がったのかな。僕はソロMCなので、コラボ曲にあたって自分の思い描く曲のキャラクターとフィールドや座組みを考えている時間というのがすごく面白いし、マイクリレーができる楽しさってやっぱりヒップホップしかないと思います。
■リリース情報
『KEN THE 390 15th anniversary BEST 〜2012-2020〜』
発売:5月27日(水)
TRACK LIST:
-Disc 1-
1. Re:verse feat. 漢 a.k.a. GAMI
2. インファイト feat. ERONE, FORK, 裂固 & Mr.Q
3. Make Some Noise feat. ZORN & NORIKIYO
4. Shock feat. SKY-HI, KREVA & Mummy-D
5. Turn Up feat. T-PABLOW, SKY-HI
6. 真っ向勝負 feat. MC☆ニガリ a.k.a 赤い稲妻, KOPERU, CHICO CARLITO & 晋平太
7. 調子悪い feat. サイプレス上野 & DOTAMA
8. Call Of Justice feat. DOTAMA, Rude-α, Rei©︎hi, じょう, ACE, MC☆ニガリ a.k.a 赤い稲妻, Lick-G & KOPERU
9. Chase feat. TAKUMA THE GREAT, FORK, ISH-ONE & サイプレス上野
10. My Promise feat. KOPERU, DOTAMA, peko, YURIKA & 裂固
11. Nobody Else feat. ACE COOL & Moment Joon
12. ガッデム!! OSAKA ver. feat. MINT, R-指定, ERONE
13. Pop!! feat. SHUN, SWAY, KLOOZ
14. Rock The House feat. R'kuma, 裂固, EINSHTEIN & じょう
15. Lego!! Remix feat. SKY-HI a.k.a 日高光啓, KLOOZ, 環ROY, TARO SOUL
16. Think Of You feat. Full Of Harmony
-Disc2-
1. リフレイン
2. Rain
3. 深海魚 feat. HISATOMI
4. Winter Song
5. You Like That
6. after party feat. HISATOMI
7. Won't Stop
8. 夜が来るまで (Remix) [feat. ACE COOL]
9. 五月雨の君に feat. 鋼田テフロン
10. ユラユラ ~AM3:00~
11. 何もしたくない
12. 無重力ガール
13. Be Natural
14. 2階建ての家を買おう
15. Clap
16. Funk U Up
17. Like This Like That
18. ガッデム!! TOKYO ver. feat. CHERRY BROWN,晋平太, AKLO
19. DREAM BOY
<限定版追加収録内容>
CD -ANOTHER BEST-
1. Kick it
2. The Bee
3. プール
4. カンフル剤~Get Naked Part,2~ feat. エムラスタ(ROMANCREW)
5. Knock Down feat. TARO SOUL, DEJI
6. It’s My Business
7. 三度の飯よりマイクロフォン feat. KOPERU
8. チンパンジー
9. どうでもいい
10. Yes or No feat. JAZEE MINOR
11. Nobody Knows feat. Lick-G
12. メモリーレーン
13. Hollywood
14. YDK~やればできる子~ [feat. KOPERU]
15. Secret
16. 月明かりの下でダンス (Remix) feat. Ymagik
17. 君がいない
18. Black Hole
19. Get Better
<DVD TRACK LIST>
・Music Video
1. 深海魚 feat, HISATOMI
2. プロローグ (2006 Music Video)
・STUDIO LIVE “KICK OFF”
1. Turn Up
2. Make Some Noise
3. Chase
4. Nobody Else
5. Won’t Stop
6. 真っ向勝負
7. ガッデム!!
8. 調子悪い
9. Kick it
10. Rock The House
11. Funk U Up
12. You Like That
13. Back in the Days part.2
14. インファイト
15. LEGO!!
・Behind the scenes (15th anniversary DREAM BOY BEST ~2012-2020 ~)
・Behind the scenes (2004-2007)