メジャーデビュー15周年のDEPAPEPEが愛され続ける理由 最新アルバム『Seek』でも“歌のない歌モノ”で広がる想像力
緊急事態宣言が解除されたとはいえ、現在のコロナ禍における“おうち時間”にストレスを感じたり、寝不足に陥ってる方も多いと思う。ゲームやアニメ、海外ドラマの見過ぎで目が疲れたなとか、webニュースやSNSを追いかけすぎて頭痛や肩こりがしてきたという時は、PCやスマホを見るのをやめて、目を閉じ、DEPAPEPEの音楽を聴いてもらいたい。インストゥルメンタルアコースティックギターデュオである彼らが奏でる“歌(歌詞と歌声)はないけど歌えるインスト”には、心と体を癒す効果があるのはもちろん、聴き手の想像力を喚起させてくれる要素もふんだんに詰まっているから。
今年の5月にメジャーデビュー15周年を迎えたDEPAPEPEは、2002年11月に神戸のライブハウスでバイトをしていた先輩の徳岡慶也と後輩の三浦拓也で結成。「インストミュージックをポピュラーに!」を合言葉に、アコギ2本だけで心象風景や喜怒哀楽を表現する彼らはインディーズで発表したミニアルバムが軒並みチャートインを果たし、メジャーデビュー前の2005年5月に日比谷野外音楽堂で開催されたフリーライブには満員の3000人の観客が集結し、大きな話題となった。同年から『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』や『RISING SUN ROCK FESTIVAL』などの大型野外フェスにも参加。ライブの冒頭で「はい、どーも、DEPAPEPEで~す」と朗らかに元気よく挨拶する三浦の少年のような天真爛漫さと、ほとんどMCをせずに演奏に集中する、クールでストイックで職人気質な徳岡という正反対のキャラクターも人気の秘訣の1つになっている。
「START」や「DUNK」といった勢いのあるアグレッシブな楽曲がスマッシュヒットした彼らは、映画『キャッチ・ア・ウエーブ』のサントラやアニメ『ハチミツとクローバー』の挿入歌などを手掛け、バッハやラヴェルなどの名曲に挑戦したクラシックアルバムも制作。さらに、CHEMISTRYやDiggy-Mo’、久石譲やアコーディオン奏者のcoba、そして、彼らがリスペクトする先輩であるアコースティックデュオ・JとBや押尾コータローなど、様々なアーティストとのコラボレーションも果たした(6枚目のアルバム『Acoustic & Dining』では人気料理家とコラボしてる!)。その活動は国内だけに留まらず、韓国、タイ、インドネシア、台湾、シンガポール、中国などのアジア圏にも広がっていったが、それはやはり、日本語の歌詞を歌わずに、“ギターが歌っている”インストだったことが大きいだろう。また、彼らは大型海外ジャズフェスに呼ばれることも多いが、彼らが戦っているのは、ジャズやフュージョンといったジャンルではなく、あくまでもJ-POPというフィールドだ。思わず鼻歌で口ずさんでしまうようなポップでキャッチーなメロディこそが、彼らが15年という長きに渡って、世代や性別、国境を越えた多くの人に愛される理由であることは間違いないだろう。
DEPAPEPEといえば、繊細で美しいメロディラインと、アコギ2本独特のザグザグしたバッキングであった。アコギ2本、軽快な16ビート、パワフルなオクターブ奏法といった原点に、やがて、バンドサウンドやストリングス、ピアノ、パーカッションなどが彩りとして添えられていった。“歌のない歌モノ”を楽しく演奏するという姿勢はそのままに、7thアルバム『Kiss』では、表題曲では明るくロマンチックながらも、なんともいえない切なさを表現し、「Circle of Love」や「スミレ」では愛とは何かを問うようになった。さらに、8thアルバム『COLORS』では、より洗練されたサウンドの中で元気いっぱいで爽やかな“青”だけではない微妙な濃淡を描き、滲ませるとともに、どこか聴き手を優しく包み込むような父性すらも感じる作品になっていた。家で一人で聴いているとリラックスして、ちょっとスロウダウンできるようなアルバムである。