BTS SUGA=Agust D、ミックステープ『D-2』から伝わる変化 完璧主義から自分を受け入れる姿勢へ

 そして約4年間の空白期間を挟み、『D-2』について今回はBillboardのインタビューに答えていた。

 ミックステープについて聞かれると、「これが”2016年の8月以降の自分の生き方”で、前作が過去についてを伝えていたなら今作は現在についてだ」と答えた。また、興味深かったのは、前作のミックステープを経て制作への取り組み方で変化した部分を聞かれて「リラックスするようになった。2016年以前は少し懸命にやりすぎていて、全てにおいて全力だった。(中略)完璧にしようとせず、シンプルにただ自分のベストを尽くすようにした。”完璧”は定義しにくい言葉だから」と答えていたことだ。

 妥協を知らず、完璧主義の自分に苦しむこともあった彼のこの変化は、楽曲を通して伝わってくるほどの大きなものだ。その全てを理解することはできないが、2018年の『BTS FESTA』で公開された「防弾会食」では、家族からの言葉やメンバーとの日々によって生じた、“完璧主義”から“その時の自分を受け入れる姿勢”への変化が垣間見えた。

 とはいえ、今回の作品『D-2』の楽曲は“明るい”だけで表現できるようなものが入っているわけではない。歌詞をみれば未だもがき続ける彼が詰まったような曲も多かった。ただ、特に1曲目「Moonlight」の雰囲気には驚かされた。誰もAgust Dがこんな曲を“歌う”とは思っていなかっただろう。

「Moonlight」

 それに続く後ろの数曲にも歌うパートは含まれていて、「People」のぽろぽろと滴る水のような音と彼の優しい歌声や、「Interlude:Set me free」のノスタルジックな雰囲気には、自分の知っていたAgust Dとの振れ幅に戸惑うくらいだ。

「People」
「Interlude:Set me free」

 SUGAがラップに加えて手に入れた、“歌う”という方法をAgust Dとしての今作で取り入れているのも今回のミックステープを楽しむポイントになっている。

 ミックステープは彼にとって、SUGAとして忙しなく過ごす日々の中に存在する“自分”を忘れないための記録なのだろうか。Billboardのインタビューの中でも、SUGAとAgust D、ミンユンギの違いについて「違いはあるとも言えるしないとも言える。自分と自分、そして自分。彼らは違ってもいるし同じでもある」と答えていた。

 1人の人間としての声を聞くことができるアイドルたちのミックステープ。ファンや彼らを見ている人々は、彼らも同じ人間であるということを忘れずに接していかなくてはいけない。

■フルヤトモコ
1999年生まれの大学生。韓国のカルチャーと洋楽、本、映画など。
東京藝術大学 音楽環境創造科在籍。

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