BTS SUGA=Agust D、ミックステープ『D-2』から伝わる変化 完璧主義から自分を受け入れる姿勢へ

 5月17日にBigHit Entertainmentの公式Twitterアカウントに突然現れた、「D-7」の文字とぼんやりとした何かの画像。急にカウントダウンが始まり「D-2」を迎えた5月22日、Agust Dの2作目となるミックステープ『D-2』が発表された(1作目は2016年の『Agust D』)。

Agust D『D-2』

 Agust Dは、BTSのメンバー・SUGAの個人活動名義で、出身地の大邱(Daegu-town)とSUGAを繋げて反対から読んだものだ。彼のルーツである出身地と芸名が詰まった名前が表すように、Agust DはSUGAとミンユンギ(本名)の人生を詰め込んだ言葉たちを紡いでいく。

 『D-2』のタイトル曲は「Daechwita(대취타/大吹打)」。大吹打は王の外出や軍の行進・凱旋のときなどに演奏される韓国の伝統的な軍事音楽だ。彼はよく歌詞やタイトルに自身のルーツを取り入れるが、ここまで韓国色が強い曲は初めてだ。MVも曲のイメージ通り時代劇を思わせるものになっている。Agust Dの真骨頂とも言える強気なサウンドと口調、しかしそのリリックはただ強いだけの言葉ではない。歌詞に“悲運の王”とされる光海君が出てくることや、MVで王と王を殺す者の2役を彼自身が演じていることからもその世界の深さがうかがえる。1作目のミックステープのなかの1曲である「The Last」に“ミンユンギは死んだ、俺が殺した”という歌詞があるが、「Daechwita」では、その地点から続いてる彼の戦いを感じさせる。

Agust D '대취타' MV
「The Last」

 『D-2』は、その強気さは健在ながらも前作より少し余裕のある雰囲気を感じさせる。これは楽曲制作に対する余裕というよりは、彼自身の心の変化によるリラックスした雰囲気という類のものだ。 

 1作目『Agust D』は、どこか切羽詰まったような印象だった。内在する様々な感情、ミンユンギとSUGAの間にある葛藤、過去の自分との戦い。聞いていて息をするのを忘れてしまうような、そんなラップだった。もともとラップに感情を乗せ言葉を吐き出すようなスタイルの彼だが、ミックステープともなるとグループでの活動時よりもより迫力を増した。そして、そんな彼が時々出す儚いメロディの曲にもまた心を奪われる。

 ミックステープに対しては、過去のインタビューで本人も「自分が思う青春についてストレートに表現した。自分自身についての内容も正直に入れ込んだ」と話していた。また自身についても、ミンユンギという青春はどんな20代かと問われて「とても一生懸命にぎっしりと詰まった人生を過ごしている」と答えていた。

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