Bank Band、くるり、ONE OK ROCK、LITE……リモートライブでの新たなバンド表現
ここまで挙げたのは企画性の強いセッションが多かったが、バンド形態を通常スタイルとして活動しているアーティストもまた、様々な意義の下でリモートライブを行うことが増えつつある。
IGTVにリモート演奏動画をアップしているバンドの中でも、Saucy Dogの「世界の果て」は特に光っていた。打ち込みのドラムやピアノを取り入れた新たなアレンジを施してあり、バンド形態を保ちつつも従来にない側面のアピールを果たしている。また〈誰かがテレビでさ 根拠もない不安を流すよ 信じることはないさ〉と綴られた歌詞は今の世相を反映したかのようで、リスナーの心許なさに寄り添ってくれる。
また、ONE OK ROCKは自身の代表曲「完全感覚Dreamer」をパロディした「完全在宅Dreamer」なる映像をアップして話題になった。原曲MVのクールなカット割りを再現しつつもイメージを華麗に裏切る、自宅撮影によるユーモラスで可愛げのある映像だ。自らが在宅を楽しむ姿を見せることで、ユーモアを交えながら多くのファンに外出自粛を提言しており、これもまた、ひとつの新たなバンドの表現法と言えるかもしれない。
また、大橋トリオやTK from 凛として時雨は、春のツアーに参加予定だったミュージシャン達と遠隔で演奏する映像を公開中だ。彼らはライブに向けて練り上げたアレンジを披露する場としてリモートライブを選んだ。そして5月15日に放送された『バズリズム02』では、マカロニえんぴつやOmoinotakeが最新曲をリモートライブで届けており、従来はスタジオライブとして収録されるはずだったテレビ番組においても、この形式での演奏は代替案になりつつある。
これらのリモートライブは、何度も繰り返し楽しめる、レコーディング音源との差異を楽しめるといった長所もあるが、その時間に生まれる音をその瞬間に聴くことができるライブの醍醐味はどうしても損なわれる。そんな折、5月17日にLITEが行った90分に及ぶリモート演奏の生中継は革命的な配信だった。的確に呼吸を合わせる必要があるテクニカルかつスリリングなLITEの楽曲が、リアルタイムで構築されていく様を目撃する興奮度はかなり高い。
LITEの武田信幸(Gt)は自身のnote上でこのライブを作り上げる過程を公開しており、広くシェアされていくことが期待される。ライブハウスでの演奏が解禁された後も、例えば“公開リハーサルを配信する”などの新たな見せ方に繋がる可能性もあるだろう。危機的な状況下においても、次世代へ繋がるアイデアは次々と発信され始めている。いつかまた人が集まって音楽を作る営みを取り戻すために、距離や空間を飛び越えて音楽は鳴り続けるのだ。
■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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