LUNA SEA、DIR EN GREY、MUCC、BAROQUE……オンラインから発信する新たな音楽
MUCC
ニューアルバム『惡』のリリースが延期となったMUCCは、バンドの結成日である5月4日に『Remote Super Live~Fight against COVID-19~』と題したリモートライブを配信。サポートメンバーの吉田トオル(Key)を含む5人が各自宅からセルフ撮影した映像で、「自己嫌悪」「ニルヴァーナ」の2曲を披露した。
このセットリストは、今このタイミングで発信する曲として素晴らしいチョイスだったと思う。特に東日本大震災の直後に制作された「ニルヴァーナ」の歌詞は、日常を失った今現在の状況にも重なる。〈壊れた世界の隅っこで 僕らは空を見上げてる〉と悲痛な言葉で始まるが、ラストは〈悲しみは沈み ほら 夜が明ける〉と救いの光を見せてくれる曲だ。また、ライブでも人気の高い「自己嫌悪」では、ライブさながらのノリで演奏したり、カメラの向こうにいるファンへ視線を送ったり、〈僕たちの大体80%は部屋で動画を漁っているらしい〉と歌詞を変えてみたりと、“ファンを楽しませたい”という彼らの思いが伝わってくるようだった。配信自体は10分半という短い時間ではあったものの、YouTubeのコメント欄には、世界中にいるファンからの感謝のメッセージが綴られた。
BAROQUE
ニューアルバムを携えて回るはずだった全国ツアー『BAROQUE TOUR SAINTS OR SINNERS』の日程変更や延期を発表したBAROQUEは、完全リモート制作した新曲「STAY」を4月25日に配信した。さらに、“ライブで会えないファンともその制作を通して繋がりたい”(引用:Twitter)という思いから、SNSを通して「自分の大切なもの、守りたいもの、好きなもの」の写真やコメントを募集。ファン参加型のMVを制作し、4月29日に公開した。
公開されたMVは、自宅でセルフ撮影したメンバー2人の姿と共に、ファンがTwitterで発信した言葉やメッセージ、ペットや花の写真などがコラージュされた、これまでにない作品に仕上がっていた。さらに延期したツアーの会場をGoogleストリートビューで巡るなどの粋な演出が含まれており、想像を上回るクオリティであったことに驚かされた。BAROQUEは、困難な状況下でも音楽を通してファンと繋がる新たな方法を鮮やかに提示し、音楽の可能性を大きく広げた存在と言えるだろう。
数カ月前までは誰も予想しなかった世の中になってしまったが、その中でも「アーティストとしてできることを」と、音楽を通して希望を与えてくれる彼らがいる。その存在は、日常を失ったファンにとって、何より心強いものだろう。この困難を乗り越えたあとには、ファンとアーティストの絆はさらに深まっているかもしれない。
■南 明歩
ヴィジュアル系を聴いて育った平成生まれのライター。埼玉県出身。