TRICERATOPS 和田唱、Dragon Ash Kj、くるり 岸田繁......多才なソロ活動でバンドの可能性を広げるフロントマン

 彼らと同時期に始動したロックバンドのフロントマンで、音楽性こそ違えど、近しい道のりをたどっている人がいる。Dragon AshのKjだ。1997年にメジャーデビューし、ドラスティックにメンバー編成や音楽性を変化させてきたが、続いているところは同じ。そして、彼が降谷建志名義でソロ活動を始めたのは2015年。その多才さは広く知られているが、ソロ始動そのものは実は最近なのだ。ざっくりだが、Dragon Ashが“動”なら、ソロは“静”。さらに、前に取材した時は「なるべく全部の楽器を自分でやろうと思っている」と語っていた。まだまだ秘めていた才能を、遂に惜しみなくアウトプットしはじめたのだ。これも、きっとDragon Ashをあらゆる意味で大切にしているからこそ、ソロ活動を始めたのだと思う。

 そして、もう一人挙げたい人物がいる。くるりの岸田繁だ。くるりは1998年にメジャーデビューしてから、メンバー編成も音楽性もめくるめく変化を遂げながら、今も続いている。そして岸田は、2010年代から、映画のサウンドトラック、交響曲の作曲、最近ではNHK Eテレの子ども番組『みいつけた!』にキュートで不思議な曲「ドンじゅらりん」を書き下ろすなど、ソロとしても精力的に活動中。フィールドの枠を越えて才能を発揮している。

 こうして見てみると、90年代後半から続いているロックバンドが如何に多才であるか、改めて知ることができる。この3バンドは、時代の象徴と言われたこともあり、もしかしたら長く続くとは思われていなかったかもしれない。しかも、あの頃は今よりも“売れる/売れない”で音楽が判断されている(ように感じられる)時代だった。しかし、TRICERATOPSやDragon Ash、くるりなどによって、そしてそのメンバーのソロ活動によって、長く続くロックバンドの面白みや、そこにしっかりとした素養や情熱が必要であること、そして音楽が“豊か”であることの大切さが、最近になって証明されてきたのではないだろうか。ぜひ、これを機会に今一度、サバイブし続けてきたバンドマンたちの活動を見聴きしてみてほしい。きっと、新しいロックバンドを追うだけではわからない発見があるはずだ。

■高橋美穂
仙台市出身のライター。㈱ロッキング・オンにて、ロッキング・オン・ジャパンやロック・イン・ジャパン・フェスティバルに携わった後、独立。音楽誌、音楽サイトを中心に、ライヴハウス育ちのアンテナを生かしてバンドを追い掛け続けている。一児の母。

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