Ryu☆×プロゲーマー DOLCE.が語り合う、それぞれの20年と音楽ゲームの広がり 『beatmania』ならではの面白さも

Ryu☆×プロゲーマーDOLCE.対談

 2000年に楽曲「starmine」が『beatmania IIDX 3rd style』の一般楽曲公募で採用され、同年の『beatmania IIDX 4th style』で作家デビューを果たして以降、“音ゲー”を中心に様々な人気曲を手掛けてきた音楽クリエイター、Ryu☆。彼が「starmine」でのデビューから20年を記念したオリジナルアルバム『starmine 2020 : Mare Nectaris』を完成させた。

 この作品には、「starmine」のアップデート版「starmine 2020」や新曲を含むRyu☆名義での楽曲を収録したディスク1に加えて、神楽名義で手掛けた『beatmania IIDX 24 SINOBUZ』の大ボス曲「Mare Nectaris」の原曲ロングバージョンと、kors k、BlackY、かめりあによる同曲のリミックスも収録。2枚で近年のRyu☆の楽曲の様々なバリエーションや、20年間での変化が感じられるような作品に仕上がっている。

 今回リアルサウンドでは、Ryu☆本人と、『beatmania IIDX』の絶対王者として知られ、2017年以降は音ゲー初のプロゲーマーとして解説など多岐に亘る活動しているDOLCE.の対談をセッティング。2人が歩んだ20年間と、『beatmania』/音ゲーの広がりについて語ってもらった。(杉山仁)

『beatmania』の楽しさは“音が鳴る”こと

――今回の『starmine 2020 : Mare Nectaris』は、Ryu☆さんの「starmine」から20年を記念したアルバムですね。お2人はそれぞれ、2000年当時のことを覚えていますか?

DOLCE.:2000年頃というと、僕は家庭用の『beatmania』をひたすら遊んでいた頃ですね。

Ryu☆:それは『beatmania IIDX』?

DOLCE.:いや、5鍵盤(初代『beatmania』を筆頭にした5ボタンで操作するシリーズ)だったと思います。もしかしたら『beatmania IIDX』もすでに出ていたのかもしれないですけど、僕は持っていなかったんですよ。

Ryu☆:僕は2000年に『beatmania IIDX 3rd style』の一般楽曲公募に応募して、そこで採用してもらったんですけど、当時覚えているのは、賞品が『3rd style』のゲームと専用コントローラーだったことでした。でも、自分もDOLCE.くんとあまり変わりはなくて、『beatmania』をやって、クラブにも遊びに行っているようなただのいち大学生で。

Ryu☆

――Ryu☆さんが『3rd style』の公募に気づいたのは、締切の前日だったそうですね。

Ryu☆:大学のパソコン室でたまたまHPをチェックしていたら、「楽曲公募」と書いてあって、「えーっ?!」みたいな。

DOLCE.:はははは(笑)。

Ryu☆:「明日消印有効」と書いてあったので、すぐにシンセを買いに行って、どうやったら間に合うかを考えて……。ただ、当時から僕は『beatmania』のプレイヤーだったので、ユーザーが求める楽曲像との距離が近い部分はあったと思います。『beatmania』において「これが楽しい」というジャンルや音が、自然と身についていたのかな、と。そういうことを考えつつ、サウンドはハッピーハードコアにしようと思っていました。

――シリーズに新しい要素を入れていこう、ということですね。

Ryu☆:まぁ、正確には過去にまったくなかったわけではないんですよ。『3rd style』にはジャンル「DANCE EXPRESS Hi-speed」として、「TAKE ON ME」「S.O.S.」などのハッピーハードコアリミックスが入っていましたし、5鍵盤で言うと「321 STARS」も、ジャンルはテクノポップですが、メロディがはっきりとした速い四つ打ちで、プレイヤーとして「これは面白いぞ」と思っていて。それもあって、「starmine」で応募しようと思ったんだと思います。

DOLCE.:Ryu☆さんの「starmine」が実装された当時、僕はまだゲームセンターでIIDXを触ったことがなかったので、家庭用になってこの曲を初めてプレイしたんですけど、アンダーグラウンドなクラブミュージックの要素が強かった当時の『beatmania』の中でも、一際ポップな、輝いている雰囲気の楽曲で、楽しくプレイしていたのを覚えています。

DOLCE.

――Ryu☆さんの曲には、一度聴いたら耳に残るメロディやフックがありますよね。

Ryu☆:特にサビのメロディは、1回聴いたら耳にこびりつくようなものにして、「曲を覚えて帰ってもらいたい」と思っていて。というのも、特にゲームセンターの場合、それぐらいのパンチ力がないと一見さんを惹きつけられないんですよ。「筐体から流れる音だけでも惹きつけられる」のはとても重要で、「starmine」もそこを大切にできた曲なのかな、と思います。これはやっぱり、自分がプレイヤーでもあったことが本当に大きかったと思います。

――では、プレイヤーとして、お2人が『beatmania』シリーズに感じる魅力とは?

DOLCE.:まずは基本的なことですけど、ボタンを押して、それに対応した「音が鳴る」という楽しさですよね。

――『beatmania』シリーズの楽曲はパラデータで納品されているそうですが、「プレイヤーがボタンを押して“弾き音”を鳴らせる」というのは、確かに大きな特徴のひとつですね。

Ryu☆:そうですね。弾き音があるのは、最近では珍しいと思います。今はほとんど、プレイヤーが打ち込んだ音がSEとして鳴るか鳴らないかぐらいのものが多いので。それに、そもそも「音が鳴る」とういうのは、とても原始的な人の喜びにかかわるものですよね。たとえば、『ストリートファイターⅡ』のSEを鳴らせるモードで、「波動拳!」「波動拳!」と連打するだけでも楽しい、というか(笑)。

DOLCE.:(笑)。たとえピアノが弾けなくても、そこにある音を鳴らすことができる。それって、とても魅力的だと思います。

Ryu☆:つまり、『beatmania』の楽しさのひとつって、「演奏の楽しさ」だと思うんですよ。しかも、上手くプレイすればひとつひとつのボタン判定の度に、「GREAT」「GOOD」と褒めてくれるんですよね。更に曲の最後には「フルコンボ!」や「AAA!!!」など、結果でも褒めてくれます。音楽ゲームのように2分間で2000回以上褒めてくれるものって、世界中を探してもなかなかないので(笑)。

――DOLCE.さんが特に好きなRyu☆さんの楽曲はありますか?

DOLCE.:僕は「Abyss -The Heavens Remix-」が衝撃的でした。原曲を知らない状態でリミックスからプレイしたんですけど、その時点で「めちゃくちゃいい曲だなー!」と思っていて。そこからさらに原曲を聴いたときに「元の曲とこんなに違かったのか」と、曲の良さ・発想力の凄さで二度驚きました。ムービーも爽やかで、人がプレイしている様子を後ろから見るのも好きでしたね。

Ryu☆:この曲を作った頃、僕はまだ大学生だったと思うんですけど、この頃から、各地の筐体がオンラインで繋がるようになってきて、精密なランキングが分かるようになったんです。そのとき、dj TAKAさんからメールが来たのを覚えていますね。リアルなプレイカウントが出るようになったときに、「Abyss -The Heavens Remix-」が断トツで人気だったんですよ。

DOLCE.:実際、よく行ってたお店でもみんなプレーしてましたよ!

Ryu☆:P*Lightくんも、「こういう曲をつくりたい」と思ってくれて、制作をはじめたそうで。前に制作してくれた「Second Heaven (P*Light Remix)」は、「Abyss -The Heavens Remix-」のアレンジ方法を使ってくれています。粋ですね。

DOLCE.:あと、今回のアルバム収録曲だと、僕は「Under the Sky (Ryu☆Remix)」も好きですね。この曲が入っている『Cyber beatnation 1st conclusion』自体が好きだったこともあって、今回アルバムに入ると聴いたときに心躍りました。この時代にアップデートされた「Under the Sky」が聴けるのは嬉しいな、と。

Ryu☆:今回「『starmine』から20年」というテーマでアルバムを考えたときに、爽やかかつ、ポップでキャッチーな雰囲気が「合うなぁ」と思ったんです。ただ、音として少しやり直したいところもあったので、その部分はちょっとだけいじりました。本当は、アルバム用に全部作り直そうかと思ったんですけど、聴いてみると、「そのときにしか出せなかった音」が結構あったんですよ。この曲は2006年ぐらいに作った曲で、今はもう使わなくなってしまった機材や楽器が使われているので、むしろ「それを残した方がいいな」と。そこで音の調整だけをして、グルーヴを今のものに近づけていきました。

DOLCE.:他には、『beatmania IIDX 11 IIDX RED』のエンディング曲のリミックス「IIDX RED Ending (Ryu☆Remix)」も、往年のファンの心を鷲掴みにする曲ですね。

Ryu☆:『RED』のエンディング曲は自分もすごく好きで、ことあるごとに入れようと思っていたんですよ。『REFLEC BEAT groovin'!! upper』で開催された企画「BEMANI MUSIC FOCUS」の自分がチョイスした回でも「隠し曲はこれにしてくれ!」と言ったんですけど、そのときは曲の尺が足りないこともあり、叶わなかったりもして……(笑)。

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