嵐、ライブ演出で唸るポイント 『「untitled」』ツアーYouTube無料公開を機に解説

楽曲とセットリスト

 『「untitled」』の序盤、「最後まで俺らについてこい」という松本の言葉があったが、予想だにしない演出の連続でついていくのに必死だった。「Green Light」からスタートし、1時間52分の本編終了までに目まぐるしく景色がかわった。「バズリNIGHT」では相葉雅紀・大野智・櫻井翔がギャルに扮してパラパラを披露したかと思えば、8本の糸を再現したプロジェクションマッピングで大野を操るようにみせた「つなぐ」、「Pray」では雪景色を、巨大ステンドグラスでゴスペル感を演出した「光」と、巨大パネルならではの迫力を活用した映像とパフォーマンスの融合。反対に、演出を抑えたのが二宮と相葉のユニットソング「UB」。お揃いの衣装で登場し、体を絡ませながら身長差を利用したペアダンスを披露。引き算によってパフォーマンスが際立った。

 また、「Bittersweet」「GUTS!」など、メンバーが出演したドラマの主題歌も盛り込むなど初見でも楽しめる工夫を忘れない。「Sugar」では、相葉の甘いファルセットに、雄々しい松本と櫻井の声が重なることで甘美さが際立つ。歌割に合わせてメンバーを一人ずつローポジションからフォーカス、スイッチングで翻弄。曲終わりにはぐっと心が掴まれた。

 極め付けは1時間36分過ぎから10分超に渡る「Song for You」と「『未完』」。終盤に負荷の高い楽曲を揃えたことも注目したい。イントロから交響曲を思わせ、大野の歌唱力とミュージカル調のダンスでショーへと引き込む。管弦楽の重厚なメロディに、彼らの軌跡をたどった歌詞、LEDビジョンには当時の画像が出現。そこへメンバーのパフォーマンスが重なる。ミュージカル映画や演劇の一幕のようだ。

 トーンを一変、嵐の編曲を数多く手がけてきた佐々木博史氏のサウンドにメッセージ性の強い歌詞を合わせた「『未完』」。中盤に「交響曲第40番第1楽章」(モーツァルト)をミックスし、櫻井の〈後ろなんて見ない〉〈ひたすらもがけ〉と、自分を鼓舞するかのようなRAPへと続く。ライブ終盤に負荷をかけた彼ら、「未完」というキーワードを踏まえた演出で本編を終えた。

 回を追うごとに新しい試みを盛り込んだ演出、コンセプチュアルな構成、ストレートな表現を盛り込んだストーリー、追い込むメンバーのパフォーマンスに、笑ったり恋したり、黄色い声援をあげたり、圧巻の演出に涙したり……。

 嵐は、映像作品の売上でも「DVD1位獲得作品数」18作連続、通算20作と記録を更新し続けている(参照)。メンバーのパフォーマンスはもちろんだが、照明づかい、ビジュアル、特効などの演出を、真上やハイポジションなど様々な角度から全体・部分を収めた、映像作品としての完成度が高いことも要因だろう。

 思わぬタイミングで嵐の世界に触れ、また一つエンタメの扉が開いた人も多いのではないだろうか。

■柚月裕実
Web編集者/ライター。企画、担当編集、取材・執筆してます。
日本の男性アイドルの頑張りを見ては涙する30代。
始まりはSMAP中居さん。 KAT-TUN、NEWS中心の事務所担。年中HDDの整理と原稿書きに追われています。

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