ITZY、数ある“ガールクラッシュ”コンセプトの中での特異性 ストレートなメッセージやハウス取り入れたサウンドが軸に

 例えば、似たテーマでもBTSはメンバー達の実体験も混ぜながらメンタルヘルス等のテーマを扱うことで、リアルに、時に複雑に訴えかけたのが印象的。対して、ITZYの歌詞に共通するのは、“自分に自信を持つ時に、他人の視線や意見は関係ない。自分にはこんなところがあるから、なんていう根拠も必要ない。あるがままでいる自分が最高なんだ!”と強く言い切る爽快さだ。こうしたわかりやすくストレートな部分がITZYらしさであり、今の世代からの支持を受け、新人グループが群雄割拠するシーンでスターダムへと一直線に駆け上がっている理由の一つだろう。

 ITZYの音楽性にも特徴的な部分がある。EDM的な曲展開、曲中に挟まれるラップパートなど他のグループ達と共通する部分は多いものの、筆者は以前から特にハウスミュージックの要素の強さを印象的に感じている。楽曲のテンポ感もBPM120台の軽快なビートが多く、メンバー達が自信満々に駆け抜けていくイメージにぴったりだ。イギリスの雑誌『Dazed』のデジタル版に掲載されたリスト「The 20 best K-pop songs of 2019」でも、「DALLA DALLA」について1999年のフレンチエレクトロのヒット曲であるミスター・オワゾの「Flat Beat」を想起させると評していた(参考:Dazed)。ITZYの楽曲は、ビートにだけ集中してみれば、ハウスミュージック系のクラブでかかっていても違和感のないような楽曲が多いと感じる。

「Flat Beat」

 最新作『IT’z ME』ではもちろん収録曲が増えた分だけ、取り入れられるジャンルも多様化した。ハードなギターサウンドを前面に出した「NOBODY LIKE YOU」はとりわけ新鮮だった。しかしそれでも印象的なのはクラブミュージック方面のサウンドで、フューチャーハウスの代表的人物、オリヴァー・ヘルデンス(「TING TING TING」)や、イギリスの実験的なエレクトロミュージックのレーベル、<PCミュージック>のソフィー(「24HRS」)といった面々の参加は示唆に富む。ITZYほどの人気グループが世界的な著名プロデューサーとコラボするといっても、ポップ系の作家ではなく、この2組を起用したことは、彼女たちが音楽性の面では現在進行形かつグローバルなクラブミュージックシーンの要素を一つの核としていくということを、今後に向けても強く印象付けたと思うのだ。

「NOBODY LIKE YOU」

 若者を鼓舞するストレートなメッセージ性に加え、作品を重ねながら自分たちの核であるダンスミュージックのサウンドも深く追求したITZY。デビュー2年目の最初の作品『IT’z ME』で彼女たちは着実な進化を見せてくれた。この作品が世界的にどれだけ支持を得るのかがポイントだ。

■山本大地
1992年生まれ。ライター。海外の音楽を中心に執筆。2016年まで「Hard To Explain」、2019年11月まで「TURN」編集部に所属。2019年12月から韓国ソウル在住。
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