増田貴久が『喜怒哀楽』で魅せる感情表現の極致 歌を届けてきた軌跡と共に“今”聴いてほしい楽曲群を紐解く

増田貴久の1stソロアルバム『喜怒哀楽』が、いよいよ2月12日に発売となった。“いよいよ”とあえて強調したくなった理由は、リード曲「喜怒哀楽」を聴けばおわかりいただけると思う。
まずは、イントロからアカペラで歌い上げるその豊かな声量に度肝を抜かれることだろう。真っ直ぐに突き抜ける高音パートが気持ちいいのはもちろんのこと、伸びやかなロングトーンにもうっとりとさせられる。かと思えば〈僕の喜怒哀楽〉というフレーズの力強さにハッとさせられる。そのまま巻き舌が奏でられると、今度は怒りを表現したラップの技術力に圧倒される。
ここまでくると、もはや口角が上がるのを抑えられない。自分の耳が喜んでいるのを感じる。増田自身が歌うことを楽しんでいることが伝わってくるようだ。「1人で歌いきるのは難しい曲かなと思う。感情の起伏激しいね、みたいな」(ラジオ『増田貴久・中丸雄一のますまるらじお』(MBSラジオ)2月5日放送回より)と言いながら余裕で歌いきってしまう度量の大きさ。そして、これほどまでに1曲で自身の歌唱力を見せつける楽曲を、ソロアルバムの1曲目に入れる増田貴久というアーティストの気概にあっぱれと言いたくなる。

増田が高い歌唱力の持ち主であることは、NEWSファンの間では十分すぎるほどに浸透してきた。時には、広いコンサート会場でアカペラを披露して観客の涙を誘ったこともあったし、バラエティ番組では女性歌手が歌う楽曲を見事にカバーして、その音域の広さに驚愕の声が上がったことも。しかし、その実力の高さに対して、これまで増田がソロアーティストとして作品を残そうという動きには控えめな印象を覚えた人も少なくないはず。それは、彼がアイドルグループのNEWSを第一に考えてのこと。「NEWSに対して何か損になるようなことはやりたくない、と。考えすぎじゃないかっていうくらい考える人」と、今作で初めて作詞提供をした加藤シゲアキがラジオ『SORASHIGE BOOK』(FMヨコハマ)で語っていたのが印象的だ。
そんな増田が「シゲが小説を書くことでNEWSに還元するものがあるだろうから、自分は歌だ」という想いを胸に、満を持してソロアルバムをリリースしたというのだから、その力の入り具合も相当なものだと想像できるのではないだろうか。もちろん、これまでもNEWSのライブで数々のソロ曲を披露してきた増田。今回の『喜怒哀楽』をきっかけに“掘り下げていきたい”という人のために用意されたであろう全14曲が収録されたSolo BEST盤(初回盤B)があるのも嬉しい計らいだ。さらに「中でもイチオシは?」なんて質問が飛んでくるのも想定済みかのように、初回盤Bにはファンから高く支持されている「戀」の撮り下ろしMV&メイキングが収録されているというのも気が利いている。
増田といえば無類のファッション好きとしても知られているが、様々なアイテムを着こなすかのように音楽を歌いこなしていくのが見ていて楽しい。ミュージカルテイストで和の雰囲気を漂わせる「暁-AKATSUKI-」、アイドルらしいキュートさ全開の「Pumpkin」、ダンスしながらブレない生歌がまさに超人と言いたくなる「SUPERMAN」、清々しいロングトーンと気持ちいいラップが楽しめる「Skye Beautiful」、言葉を丁寧に届けるように歌い上げる「FOREVER MINE」、ソウルフルながなりに目が逸らせなくなる「Thunder」、そして全身で愛を叫ぶ姿に涙腺を刺激されるバラード「戀」……と、かいつまんでの紹介でも、いかに幅広いジャンルの楽曲を歌いこなすことができるアーティストかがおわかりいただけることだろう。
また、「喜怒哀楽」のMVでマイクに囲まれている演出の原点とも捉えられるソロ曲「XXX」は、超絶技巧ラップが圧巻で多くのファンが心を射抜かれた1曲でもある。そして、最新ソロ曲の「kawaii」も息をつく暇も与えない言葉のシャワーが降り注ぎ、不思議な浮遊感を覚える名曲に仕上がっている。このテイストが好きな方は、同じチームが手掛けたNEWSの「夜よ踊れ」もおすすめ……と、あらためてNEWSの楽曲に注目せずにはいられなくなるのが、増田の言う“グループに還元する”ということなのかもしれない。