WANIMAがまたひとつ、大事なことを教えてくれたーー「春を待って」配信リリースに寄せて

 3月12日。WANIMAの新曲「春を待って」が配信リリースされた。

WANIMA『春を待って』

 10月にリリースされたメジャー2ndフルアルバム『COMINATCHA!!』を引っ提げて、昨年11月から、様々な形態の会場を巡る過去最大級の全国ツアー『COMINATCHA!! TOUR 2019-2020』を行っていた彼ら。昨年のライブハウス&ホール編を経て、1月からはアリーナ編をスタート。2月23日の朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター公演までを終えたところで、新型コロナウイルス感染拡大を抑制するために、2月29日、3月1日のサンドーム福井公演、そして3月7日、8日の愛媛県武道館公演の中止を発表した。追って、3月14日、15日のさいたまスーパーアリーナ公演の中止も発表。もちろん、今は彼らや彼らのファン、スタッフ、その周りの人たち、もっと言えば社会すべての人たちがウイルスに感染しないことが何より大切だ。とは言え、私が昨年インタビューした時も「ライブが生き甲斐」「みんなの楽しみを増やしたい」と笑顔で語っていた彼らのことだ、計り知れないほどやりきれない思いがあることだろう。そして、その思いは、きっとファンも一緒だ。彼らのライブを観ていると、ファンは「生きてる!」を体現しているように映るほど弾け、歌っているのだから。

 そんな思いを抱えている最中に、「春を待って」が配信リリースされるというニュースが届いた。これは、前述のツアーのアリーナ編で新曲としてすでに披露されていたもの。もともとリリースの予定はなかったそうだが、ライブの中止を決定した2月25日にWANIMAチームが集い、「ツアーでやっていた新曲をレコーディングし、ツアーを楽しみにしていた方々や音楽が支えになっている方々に最速で届けたい」(KENTAのコメント抜粋)と、福井公演をやる予定だった日からレコーディングをはじめ、バンド、レーベル、事務所、ジャケットを手掛けたLEFLAH CREW、様々な人たちが動いて、リリースを迎えたのだという。

 まずは、このスピード感に圧倒された。思い立ってすぐに行動を起こしたというところには、彼らの根本にあるインディースピリッツ、パンクスピリッツを感じずにはいられない。もちろん、感情論だけではない、冷静な判断力も兼ね備えている彼ら(と彼らのチーム)だからこそ、今の立ち位置で、メジャーフィールドで、こういったことができたのだと思う。これまでどんな逆境でも前を向いて生き抜いてきたWANIMAの3人の底力は、これほど大変な状況の時にも発揮されるのだ。この彼らの姿勢そのものにも、励まされた人は多いだろう。

 また今回、どんな大きな会場でライブをやるようになっても、どんな有名な存在になっても、何よりもファンを大事にしているという彼らの核も、改めて明らかになったと思う。レコーディングしたばかりのできたてほやほやの、まだ湯気がのぼっているような状態の楽曲を、配信リリースという、ある意味で手渡しのように届けるスタイルからは、まるで、隣から温かい飲み物を差し出してくれるような、温度感と距離感が伝わってきた。

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