木村拓哉、泉谷しげる、宮本浩次……忌野清志郎、万人から愛される理由は? 色あせることのない素直で自由な音楽性

 2月16日に忌野清志郎の特番『輝き続けるキヨシロー』(BSフジ)で放送された。同番組は“なぜ忌野清志郎は、こんなにも多くの人から愛されているのだろうか?”をテーマに、泉谷しげる、いとうせいこう、大竹しのぶ、木村拓哉、武田真治が清志郎との出会いやエピソード、名曲について語り合うなど、さまざまな角度からその魅力を掘り下げながら、未来へと伝えていく。

 これまで数えきれないほど多くのアーティストに歌われてきた忌野清志郎。いくつかのカバーを振り返りつつ、彼の楽曲が愛される理由をあらためて考えてみたい。

 まずは、『輝き続けるキヨシロー』に出演した木村拓哉の初となるオリジナルソロアルバム『Go with the Flow』の楽曲「弱い僕だから」(忌野清志郎の長年の盟友・三宅伸治が新たにアレンジ)に注目してみようと思う。この曲はもともとRCサクセション時代にライブで演奏していたもので、それを清志郎が生前に親交の深かった木村へ提供。1997年、SMAPのアルバム『SMAP 011 ス』に彼のソロナンバーとして収録された経緯がある。

 SMAPという国民的アイドルグループのメンバーとして、マルチタレントとして、多大なる注目を集めてきた木村拓哉が人生の岐路に立つ中で歌う「弱い僕だから(session)」を聴くと、忌野清志郎の魅力も自然に伝わってくる。〈弱い僕だから 君が必要なのさ〉――たとえば、歌い出しから自分の弱さを衒いなく素直にそう見せられるのがすごい。誰もが抱いている気持ちなのに、声にするにはちょっと恥ずかしくてためらってしまうような部分。すなわち、言いにくい本音を清志郎はズバッと歌詞にしてみせる。ロックンローラー然と強気に叫ぶばかりではなく、〈一人じゃこわいのさ〉〈君の前では 恥もかけるのさ〉と弱気な内心を取り繕わずに表現できるのが愛される所以だろう。プライドの高い人ならば、きっと後者を隠したがる。けれど、清志郎はむしろ開けっぴろげにする。

 聴く側(特にいろんな物事に気を遣いがちな日本人)にとって、その歌詞の角度はウキウキしてしまうほどに新鮮で、日々の生活で溜まった雑念をフッと消してくれる感じがある。言うなれば、デトックス。清志郎を愛する人なら頷けるであろうそんな効用ゆえ、アーティストたちは折に触れてカバーし、実際に歌い奏でることでピュアに音楽が好きな気持ちを再確認しているように見える。木村拓哉が今の状況で「弱い僕だから」を再録したのも、素直さや自分らしさを取り戻したかったからなのかもしれない。以前と変わらず温かく支えてくれるファンを“君”と歌って。

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