never young beach、『ロマンスドール』主題歌が象徴する“余白の美しさ” バンドの新たなフェーズを感じさせる楽曲に

ネバヤン「やさしいままで」レビュー

 never young beach(以下、ネバヤン)初の映画主題歌書き下ろしであり、2020年最初のリリース楽曲でもある「やさしいままで」。すでに1月17日に配信シングルとしてリリースされているが、映画『ロマンスドール』が1月24日に全国公開され、楽曲そのものや現在のネバヤンの音楽性、さらには初めてネバヤンの音楽に出会う人もいるタイミングということもあり、高い注目を集めそうだ。

 徹底してオリジナルなサウンドプロダクションにこだわり抜いた前作のアルバム『STORY』(2019年5月)は、ピアノやエレピ、女声コーラスなど、メンバー4人以外の楽器を加えた意欲作であると同時に、ボーカルやギターのリバーブを排し、低音を支えるベースやバスドラの圧も極力抑え、シンバルもほとんど使わず、ハイハットの繊細な刻みも、ごく抑えた音質が印象的であった。安部勇磨(Vo/Gt)が、「70年代に置ける細野晴臣ソロ3作品の音像が時代を超えてなお説得力を持って響くのはなぜか?」を追求した結果でもある。あるいは、バンド全体で共有していた、例えば坂本慎太郎による必要最低限の音とリフレインが生み出す興奮や、Vulfpeckが奏でるミニマルファンクの現代性とリンクしたその実体は、音数を削ぎ落とした作品が主流になりつつある中でもアグレッシブなほど、必要な音しか鳴っていないし、体感としてはサイケデリックにさえ感じられた。

 また同時に、歌詞もフラットな視線の中でほんの少し現実に抗ったり、受け入れたりしながら自分自身でいることを言語化していたように思う。リリース当時のインタビューで安部は「ポジティヴもネガティヴがあるからだし、ネガティヴもポジティヴがあるからなんで。最近、ポジティヴだけが全てだったり、自分のことを悪く言って笑いをとったりとか、どちらもちょっと極端すぎるかなと思って~もうちょっとフラットな感じでポジティヴな面も寂しい面もあるよ、っていうことは歌いたい」(Qetic インタビュー)と話していた。

 そんな意識で制作された『STORY』の次なるフェーズとして発表されたこの「やさしいままで」を聴くと、『ロマンスドール』への書き下ろしというお題ありきのオファーのタイミングがあまりにも今のネバヤンにハマっていることに気づく。3年近く前にネバヤンを知ったという原作者/脚本・監督のタナダユキが彼らに主題歌を依頼したことも慧眼であるが、今のネバヤンだからこそ、決してほのぼのとはしていない、少し風変わりなラブストーリーどころか、なかなか苛烈な夫婦の関係を表現したこの映画のおしまいに、余白たっぷりな楽曲を作ることができたのではないかと思う。

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