never young beach、『ロマンスドール』主題歌が象徴する“余白の美しさ” バンドの新たなフェーズを感じさせる楽曲に

ネバヤン「やさしいままで」レビュー

 ミニマルで残響がなく、異次元的な感覚すらもたらした『STORY』から続けて聴くと、空間が少し広くて現実的な印象の楽曲。柔らかいエレピと控えめなアコギが春先の霧雨のように、慌ただしい気持ちをなだめ、埃を落としてくれるような感覚に陥る。その中でもアコギのフレットを移動する音がそのまま生かされていて、ボリュームとしてはボーカルの次ぐらいに存在感がある。そのことが小さな部屋で演奏を聴いている感覚を呼び起こすと共に、耳に残る引っ掛かりを残すのだ。同曲のマスタリングエンジニアである小鐵 徹は、もはや阿吽の呼吸で今のネバヤンを最終的な聴感に定着させるキーマンだ。

 「やさしいままで」というタイトル自体、余白の美しさを象徴している。前後にどんな言葉をつけるかは、この映画に紐付けても、無関係でも成り立つが、歌詞を踏襲するとそれは“記憶”のことを指しているのだろう。それこそポジティヴもネガティヴがあるからこそだし、人間が修羅と化すのは純粋さや情熱の裏返しだったりする。穏やかな音像とボーカルだからこそ、聴き手それぞれが、思い出すと少し苦しくなるような大切な人との対峙や、他人にとっては些細な、でも自分にとっては美しいといった瞬間がじっくりと、しかしはっきりと思い起こされるかのようだ。

 楽曲は時間にすれば3分半の短い時間だが、例えば仕事の手を少し休める時、車のエンジンを切る瞬間、雑踏から少し離れる時……存外の強さで心を揺さぶるはずだ。同時にそれはネバヤンが獲得した現代における普遍性が広がる新たなフェーズでもある。

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。

never young beach「やさしいままで」

■配信情報
never young beach
配信シングル「やさしいままで」
2020年1月17日(金)リリース
1. やさしいままで *映画「ロマンスドール」主題歌
2. ららら *映画「ロマンスドール」劇中歌
3. やさしいままで(Instrumental)

■公開情報
映画『ロマンスドール』
2020年1月24日(金)全国ロードショー
サイトはこちら
(C)2019「ロマンスドール」製作委員会
配給:KADOKAWA

never young beach オフィシャルサイト

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